2023年5月29日
沖電線株式会社
沖電気工業株式会社
耐高圧蒸気FPC(左)と耐高熱FPC(右)
OKIグループの電線事業会社OKI電線(社長:山口 英雄、本社:神奈川県川崎市)は、高温・高圧蒸気環境の厳しい条件で使用できるフレキシブル基板(FPC)(注1)である「耐環境FPC」の新商品として、「耐高熱FPC」および「耐高圧蒸気FPC」の2品種を開発しました。高熱処理を伴う機器や、高圧蒸気による滅菌処理が必要な機器をターゲット市場として、6月からグローバルに販売を開始し、今年度1億円以上の売上を目指します。
FPCは、基材にプラスチックフィルムを使用した柔軟な基板です。一般的なリジッド基板(注2)と比較して極めて薄く柔軟性に優れ、自在に曲げることができるため、電子機器内でのわずかな隙間や、立体的な配置、繰り返して屈曲する可動部での配線が可能です。またリジッド基板と同様に部品実装も可能なことから、身近な電子機器や産業電子機器など幅広い分野で使用され、電子機器の小型・軽量化に欠かせない存在になっています。
近年では、200℃程度の高熱処理を伴う半導体製造装置や、高圧蒸気による滅菌処理が必要な医療装置などでも、FPCの採用ニーズが高まっており、より厳しい環境に適応できる性能が求められています。しかし従来のFPCは、80℃以上の高温、あるいはそこに湿度が加わった高圧蒸気環境にさらされると基板回路を保護する絶縁層の接着部が劣化し、絶縁層剥離不良が発生するという問題がありました。
新開発の「耐高熱FPC」は、銅箔にOKI電線独自の表面処理を施し、絶縁層との密着性を高めました。また「耐高圧蒸気FPC」は、独自の表面処理に加えて、耐高圧蒸気性を向上させるため、絶縁層にシリコーン系樹脂を採用しました。これにより耐高熱FPCは200℃×1,000Hの高温処理後でも、また耐高圧蒸気FPCは132℃/0.2MPa(注3)/15min×250回の高圧蒸気処理後でも、絶縁層の密着性を維持し、絶縁抵抗などの電気特性も規格(JPCA-UB01(注4))を十分満足する性能を実現しました。
これまで使用環境の制約からFPCが採用できなかった用途や機器に対しても、FPCの特長を活かした配線が可能となり、機器設計の自由度が高まることで、さらなる高機能化に貢献します。
なお新商品は、2023年5月31日~6月2日に東京ビックサイトにて開催される「電子機器トータルソリューション展/JPCA SHOW2023」OKI電線ブース(ブース番号5H-04)に出展します。
対象 | 処理条件 | 判定基準 | 結果 | 判定 |
---|---|---|---|---|
耐高熱FPC | 200℃×1000H | ≧ 500MΩ | 1.0×107MΩ | 〇 |
耐高圧蒸気FPC | 132℃/0.2MPa/15min×250回 | 1.1×106MΩ | 〇 |
「フレキシブルプリント回路基板」、「フレキシブルプリント配線板」とも呼ばれる。絶縁性を持った薄く柔らかいベースフィルム(ポリイミドなど)と銅箔などの導電性金属を貼り合わせた基材に電気回路を形成した基板。
ガラスや紙にエポキシ樹脂などを含浸させたものをベースとする硬い性質のプリント基板。構造が比較的単純で表面実装の際も扱いやすく、また安価であることから、プリント基板の中で最も広く利用されている。
圧力の単位。1MPaは1cm×1cmの面積に約10.2kgの荷重が作用した状態。
一般社団法人日本電子回路工業会による電子回路基板規格。