COLUMN
AI連載(3):社内で広がる生成AI活用! OKI AI Chatシステムの最前線と業務改革事例

この記事で分かること
- OKI独自の安全な生成AI活用基盤の全貌
- 契約書審査やコールセンター業務における生成AI活用の具体的な事例
- 現場主導のイノベーションを生み出す社内コミュニティ活動
- AIを「自分ごと」として捉え、業務変革を進めるためのヒント
近年、文章や画像、プログラムといった“コンテンツ”を自動で生み出す生成AIの進化と普及が、ビジネスの現場に大きな変化をもたらしています。
多くの企業ではメール文などの文書自動生成や、問い合わせ対応の効率化、ナレッジ共有の円滑化など、生成AIを日常業務に取り入れ、「生成AIの活用」は、もはやビジネスの現場で当たり前になりつつある一方、「生成AIをどう安全・倫理的に使いこなすか」「社内にどう根付かせるか」などの新たな課題も顕在化しています。
OKIグループでは、生成AIの登場以前から、AI全般の安心・安全な活用に向けたAIガバナンス体制を全社的に整備していました(>詳細は連載(2)参照)。さらに、こうした総合的なAIガバナンスの活動を土台とし、2023年度からは生成AIに特化した、社内独自の活用基盤やルール整備にも本格的に取り組んでいます。
連載(3)の今回は、OKIにおける生成AI活用基盤の取り組みと、社内部門で実践されている具体的な活用事例をご紹介します。技術や制度面の進化だけではなく、現場でどのような業務変革が進んでいるのか、“リアルなAI活用最前線”をお伝えします。
AIを使った新しい働き方や業務改善のヒントを、ぜひ本記事で見つけてください。
OKIの生成AI活用基盤環境 ― 安全・安心に利用可能な基盤
日々進化を続ける生成AIを社内で安全かつ円滑に活用するため、OKIグループでは2023年度より「OKI AI Chatシステム(OAICS)」を中核とした独自の生成AI活用基盤の整備を本格的に進めています。
OAICSは、OKIグループ社員が安心して生成AIを業務に取り入れられることを目的とした、ChatGPTライクな生成AIチャットサービスです。OKIではこのサービスの提供のために、セキュリティ・ガバナンス、教育、そして業務活用支援といった重要な仕組みを整備しています。
1. セキュリティ・ガバナンス体制
生成AIを安全・安心に業務で活用するには、情報セキュリティの確保が最重要です。OAICSでは、社内データの取り扱いに配慮して外部接続を制限した安全なネットワーク環境で運用されています。これにより、入力された情報が外部に漏れるリスクを抑制し、業務上の機密性・プライバシーを確保しています。
また、安全・安心を“しくみ”として持続するには、ガバナンス体制の強化も不可欠です。OKIグループでは、生成AI活用に関する独自の社内ガイドラインを策定すると共に、利用にあたっては事前に申請プロセスを設けています。さらに、申請者には必ずEラーニングによる利用者教育の受講を義務付け、リスクや注意点への理解を徹底しています。こうした統制・教育を組み合わせることで、誤用や情報漏洩リスクの未然防止につなげています。
現在、7,000名を超える社員が利用申請済みであり、生成AIの”現場活用”が広く浸透し始めています。
2. 研修・業務活用支援
OAICSの効果的かつ安全な活用を推進するため、OKIグループでは利用者向けの多様な研修プログラムを実施しています。ハンズオン形式の実践研修や、生成AIの業務活用に特化した研修をオンライン会議で開催し、アーカイブ動画を用意することで、社員がいつでも学べる環境を整えています。
さらに、生成AI活用コミュニティを社内で立ち上げ、ノウハウや活用事例の共有、利用現場からの要望の吸い上げ、共有された課題への解決策の検討など、部門を横断した活発な活動を展開しています。このコミュニティ活動を通じて、日々現場で生まれる知恵や課題が迅速に共有・解決される体制が整っており、OKIグループ全体での生成AIの活用を着実にボトムアップで進化させています。

AIで業務を革新!OKIのリアルな社内業務での活用事例
このような基盤整備・運営体制があるからこそ、OKIの各部門では安心して生成AIを活用した業務変革が進められています。ここでは、実際の業務課題にAIを活用している3つの事例をご紹介します。
事例①:契約書審査とリスク抽出の自動化
業務統括部門は、契約書の審査識別業務の支援として、契約書に潜むリスクやOKIが負う義務を特定する重要な役割を果たしています。しかし、担当者の高齢化が進み、後継者の育成が課題です。また、契約書は注文書から数十ページに及ぶ複雑なものなど多岐にわたり、それらを人手で確認・判断するため、処理に非常に時間がかかります。
そこで、収益認識に関する会計基準に加え、OKI独自のロジックである売上区分や販売モデル、過去の契約書と識別結果などをもとに、リスクの自動的抽出と識別結果を出力することができるように試行しています。また、リスクの該当箇所を要約して担当者に提示することで、契約審査業務の効率化と精度向上に取り組んでいます。

事例②:コールセンターの問い合わせ対応・FAQ自動生成
カスタマーサポート部門は、お客様からの問い合わせに対して迅速かつ正確な対応が求められています。しかし、必要な情報をFAQや社内情報から検索して回答するまで時間がかかるほか、オペレーターのスキルにより回答や対応がばらつくなどの課題があります。
さらに、FAQコンテンツの作成は高いスキルが必要ですが、コンテンツの作成者が限定されることや作成者によってコンテンツの品質にばらつきがあるなどの問題も抱えていました。
そこで、OAICSを活用してお客様からの問い合わせ内容を自動的に要約し、FAQや社内情報から適切な回答案を生成する仕組みの構築に取り組んでいます。
加えて、応対記録から応対内容を要約、抽出してFAQコンテンツを自動生成する仕組みの構築にも取り組んでいます。この一連の取り組みにより、回答やFAQコンテンツの品質のばらつきを抑制、特定業務の偏りを防ぐなど、さまざまな効果が期待できます。
また、現在利用中のFAQに含まれる分かりにくい表現などを、OAICSを用いてオペレーターにとって分かりやすい文体へ修正する取り組みも進めています。FAQの内容を分かりやすくすることで、オペレーターは必要な情報を迷わず把握できるようになり、回答しやすくなるとともに、回答内容のバラつきも減少します。加えて、経験が少ないオペレーターでも適切な回答が可能となるため、教育にかかる手間や時間が減り、業務の効率化にも繋がります。

事例③:部内チャットボットによるナレッジ共有
調達部門では1日100件以上もの発注を行い、また発注後の手配品の納期管理をしています。その中には、担当者が個別に対応してイレギュラー対応や取引先毎の個別ルールなどが多数存在していますが、それらをチーム全体で共有化できていないのが現状でした。
その現状を改善するため、ナレッジ共有ツールとしてOAICSに着目し、活用検討を行いました。今年度から部内ナレッジ情報をOAICSベースの実験環境に取込み、部内版AIチャットボットとして利用できるよう取組を進めています。
既にチーム内での試験導入を開始しており、このAIチャットボットによって属人化していた各担当のナレッジを部内で共有できるようになったことで、イレギュラー対応発生時の手立てや確認の時間が短縮されるなど、業務効率化や業務品質向上につながると考えています。

コミュニティから事例が生まれる現場力
OKIでは、OAICSを起点とした社内コミュニティ活動(OAICO)にも力を入れています。
「現場の困りごとをAIでどう解決できるか」「新しい活用方法がないか」といった意見交換から、契約書チェック・FAQ自動生成のような実践的な活用事例が次々と生まれています。
“現場発”のイノベーションこそが、AI活用の広がりを牽引する原動力となっています。

まとめ:生成AIは自分ごと、業務改革の武器に
今回ご紹介したOAICS活用事例は、まだ一部に過ぎません。OKIでは今後もAIのガバナンス・教育を徹底しつつ、現場主導での活用領域拡大を目指しています。
「AIは難しいもの」「自分には関係ない」と考える方も、まずはご自身の業務現場の小さな課題解決から、AI活用の可能性を探ってみてはいかがでしょうか。新しい技術を安心して使いこなすことこそが、業務の革新と成長を支える力になると信じています。
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次回(4)では、AIガバナンスを土台にOKIが開発したイノベーション創出AIエージェント「ダ・ビンチ グラフ」を紹介します。
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