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コラム2026年2月27日

デジタル化で「防災」はどこまで変わる?-激甚化する災害から命を守る最新の防災ソリューションを解説

この記事で分かること

  • 激甚化する気象災害と従来型の防災対策が直面している課題
  • AIやIoTセンサーの活用によって期待されるリアルタイムな状況把握
  • 一人も取り残さないための情報伝達と避難所運営のDXがもたらす効果
  • 技術と人が手を取り合うこれからの地域防災のあり方について

近年、自然災害の規模は拡大し、発生頻度も高まっています。これまでの防災対策は、主に自治体職員や消防団による現場のパトロールと、過去の経験に基づく人の判断によって支えられてきました。しかし、異常気象や局地的な激甚災害の急増など、これまでの対策では及ばない、さまざまな事象が発生しています。

こうした状況も踏まえ、いま導入が進んでいるのが、防災にデジタル技術を活用することで即時性や正確性を高め、現場の省人化を目指す「防災DX(デジタルトランスフォーメーション)」です。

そこで本記事では、監視、情報伝達、避難所運営などの各フェーズにおいて、デジタル化がこれからの防災にどのような進化をもたらしていくのか、その最新動向を解説します。

目次

従来の防災対策が直面している「限界」と「変化」

現在、日本の防災現場では、これまでのやり方では対応しきれない事態が増えています。その要因は、大きく以下の2点に集約されます。

気象現象の予測困難性が高まる

気象庁の統計によれば、1時間降水量が80mmを超える「猛烈な雨」の年間発生回数は、1976年からの10年間と比較して、直近の10年間(2015年〜2024年)では約2倍に増加しています。こうした極端な気象現象、とりわけ線状降水帯による集中的な豪雨は発生の予測が非常に難しく、短時間で河川の氾濫や土砂災害を引き起こします。そのため、これまでの観測網や予測モデルだけでは、避難を呼びかけるための十分なリードタイム(時間的猶予)を確保することが難しくなっています。

対応リソースの不足

人口の減少に伴い、地域防災の中核を担う消防団員の数は、1950年代の約200万人から現在は約74万人(2025年時点)にまで減少しており、過去最低を更新し続けています。また、自治体のインフラ点検や災害対応を担う土木技術職員についても、全国の町村の約3割で「1人もいない」あるいは「1人しかいない」という深刻な不足状態にあります。広域にわたる危険箇所の点検や、災害発生時の情報収集をこうした限られた「人の目」だけに頼り続けることは、現場の負担を増大させるだけでなく、重大な変化を見逃してしまうリスクもはらんでいます。

行政による「アナログ規制」の見直しとデジタル化の加速

こうした現場の課題解決に向け、現在、政府もデジタルの活用による規制改革を強力に後押ししています。デジタル庁を中心に進められている「アナログ規制の見直し」では、これまで目視や常駐点検が義務付けられていた業務を、デジタル技術で代替することが推奨されています。とくに、職員や団員が危険な現場に足を運ぶ必要があった目視点検などは、IoTセンサーやカメラによる遠隔監視へ移行することで、安全性の確保と業務の効率化を両立できる領域です。自治体におけるこうした「アナログからの脱却」こそが、限られたリソースで地域を守り抜くための鍵となります。

24時間365日の監視を可能にする「IoT」と「AI」への期待

防災DXとは、データやデジタル技術を活用して、防災業務の効率化や災害対応能力の向上を図る取り組みのことです。単なるITツールの導入に留まらず、収集したデータを分析・共有することで、迅速かつ的確な意思決定を可能にする「仕組みの変革」を指します。

デジタル化が進むことで、もっとも大きな変化が期待される領域の一つが、河川や傾斜地の「監視」です。

これまでは水位計の数値を確認するために現場へ出向く必要がありましたが、現在は通信技術を活用した、小型IoT水位計の設置が広がっています。数分おきなどで水位データをクラウド上で集約することで、遠隔地からもリアルタイムに近い状況把握が可能となります。

さらに、監視カメラの映像をAIで解析する技術の活用も注目されています。たとえば、カメラ映像から水位を自動的に読み取ったり、夜間や悪天候時でも川面の変化や流木の発生を検知したりする仕組みです。これが普及すれば、担当者が24時間モニターを注視し続けなくとも、危険な兆候が見られた際に即座にアラートを発信可能になると期待されています。

「届かない」をゼロに-情報伝達の多層化がもたらすもの

災害時にもっとも重要なことは、住民一人ひとりに「避難のきっかけ」を確実に届けることです。

これまでは防災行政無線の屋外放送による情報伝達が中心でしたが、雨音による聞き取りにくさや、家の中にいる人へ情報が届かないといった課題がありました。これを解消するために進められているのが、デジタル技術を用いた情報の多層化(マルチモーダル化)です。

現在、多くの自治体では、スマートフォンのアプリ、SNS、登録制のメールに加え、テレビのデータ放送や自動電話架電などを組み合わせたシステムの構築が進められています。これにより、場所や年齢、デジタル機器の利用状況に関わらず、複数のルートで緊急情報を届けられることが期待されています。

また、避難所の混雑状況をリアルタイムで可視化する取り組みは、住民が適切な避難先を自ら選択することを助け、特定の避難所への集中を回避する効果が期待されています。

避難所の受付を円滑にするマイナンバーカード活用の展望

災害が発生し、避難勧告が出された際、避難所では短時間に多くの住民が押し寄せることが予想されます。これまでは受付で氏名や住所、健康状態などを紙に記入し、それを手作業で集計・入力していましたが、この方法は受付の長い行列を生み、情報の把握に大幅な遅れが生じる要因となっていました。

こうした課題を解決するため、マイナンバーカードを活用したデジタル受付システムの導入が期待されています。カードを専用の端末にかざすだけで基本情報が瞬時に登録され、受付時間の大幅短縮が見込まれます。

自治体側でも「どの避難所に、どのような属性の人が何人避難しているか」をリアルタイムで把握可能になるため、粉ミルクや特定の医薬品など、避難者の状況に合わせた最適な支援の実現がと期待されています。

ドローンと衛星通信が変える復旧支援の可能性

デジタル化の効果は、発災後の復旧フェーズにおいても大きく期待されています。

とくに、人の立ち入りが困難な現場では、ドローンの活用が鍵となります。最新のドローンでレーザーセンシングを用い、地形の精密な3Dデータを短時間で作成できれば、二次災害のリスクを冒さずに、復旧工事の計画立案を格段に早められると考えられています。

また、地上の通信網が途絶した際には、非地上系ネットワーク(衛星通信など)の活用が有効な解決策となります。地上の基地局を経由せずにインターネット接続を確保できれば、被災地からのSOS発信や、自治体間の連携を維持することが可能になります。

これらの技術は、将来的に災害時のレジリエンス(回復力)を支える不可欠なインフラへと進化することが期待されています。

デジタル化を阻む壁と「アナログ」との融合

デジタル化を推進する上で向き合わなければならないのが、「デジタル・ディバイド(情報格差)」の問題です。スマートフォンを使いこなせない高齢者などに対し、どのようにデジタルの恩恵を届けるかが大きな課題となっています。

ここでの新しい考え方は、デジタルによって「アナログの質を高める」という手法です。情報収集の負担がデジタル化によって軽減されれば、消防団や自治体職員は、空いた時間を「一人ひとりの住民への対面での支援」に充てることが可能になります。デジタル化の真の価値は、効率化によって生まれた余裕を、もっとも手助けを必要としている人々へのサポートに還元することにあると言えるでしょう。

また、住民同士が助け合う「共助」の現場でも、SNSやアプリを活用して住民自らが「無事です」という情報を発信する仕組みの導入が進んでいます。これにより、救助が必要な場所をリアルタイムのマップ上で把握し、もっとも手助けが必要な人へいち早く駆けつけることが可能になると期待されています。

防災DXに取り組むOKIのソリューション

OKIでは、地域の防災力を高める「自助・共助・公助」の連携を軸に、現場の状況把握から迅速な意思決定までを支援する幅広いソリューションを提供しています。

OKIの総合防災ソリューション イメージ図

  • 防災情報システムDPS Core(ディーピーエス・コア):
    自治体の災害対策本部における高度な防災マネジメントを支援する中核システムです。国や県が持つ監視情報、現場の各種センサー、SNSの投稿など、散在するさまざまな情報を集約・可視化します。これにより、バラバラだった情報が一本化され、的確な情勢判断と迅速な意思決定をサポートすることが期待されています。
  • 河川監視・危機管理型水位計:
    電源確保が困難な屋外現場でも、太陽光発電のみで自立動作する「ゼロエナジーゲートウェイ」を活用した監視システムです。河川の水位を数分おきに計測し、クラウドを通じてリアルタイムで共有します。増水時に危険な現場へ巡回に出向くリスクを減らし、遠隔地から24時間体制で見守ることが可能になると期待されています。
  • 情報伝達ソリューション(防災行政無線・告知放送):
    「一人も取り残さない」情報伝達を目指し、従来の防災行政無線や消防デジタル無線に加え、戸別受信機やスマートフォンのアプリなどを組み合わせた多層的な伝達手段を提供しています。これにより、雨音で屋外放送が聞き取りにくい状況や、家の中にいる住民に対しても、避難情報を確実かつ継ぎ目なく届ける効果が期待されています。

まとめ

防災DXとは、現場が抱える「監視の必要性を感じながらも、人手やコスト、電源などのインフラ面での制約により十分な体制が築けない」という構造的な矛盾を、技術で解きほぐしていく取り組みです。

OKIでは、こうした監視体制の見直しやDXの検討に向けて、調査データを活用した課題整理や、ゼロエナジーIoTを含む最適な監視方式の検討などを支援しています。インフラ監視の高度化や防災DXに取り組もうとされている自治体・企業の皆さまは、ぜひ一度ご相談ください。

編集部
OKI STYLE SQUARE VIRTUAL編集部 防災担当
OKIのソリューションは日本の道路や鉄道の事業者さまに利用いただいています。 インフラの防災分野の専門家を交えたメンバーが、ビジネスコラムや最新の商品紹介を中心に、さまざまな社会課題を解決するヒントを集めた情報をお届けします。
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