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コラム2023年07月05日

スマートビルとは?仕組みや技術、メリット・デメリットを解説【事例あり】

近年、建物内の省エネルギーや利便性、安全性向上のため、スマートビルが注目されています。

スマートビルとは、IoTやAIなどの技術を用いて、ビル内のさまざまな設備やデータを一元管理し、リアルタイムで最適化できる建物のことです。

この記事では、スマートビルについて以下の内容を解説します。

  • スマートビルの仕組み、実現できること
  • スマートビルのメリット・デメリット
  • スマートビルの事例

スマートビルで用いられている技術や、スマートビルに期待できるメリットなどを詳細に解説しているので、ぜひ最後までお読みください。

1.スマートビルとは

スマートビル(スマートビルディング)とは、IoT技術やAI技術によって設備・データの一元管理を可能にしたビルのことです。

スマートビルでは、ビル内のオフィスやトイレ、会議室などさまざまな場所にセンサーを取り付け、人流データを収集・可視化・分析しています。分析したデータと、ビル内のセキュリティシステムや空調・照明システムを連動させ、セキュリティ強化やエネルギーの最適化を図ることが可能です。

スマートビルによって、コスト削減やオフィスの利便性アップ、ビル管理の効率化などが期待できます。

スマートビルの管理システム「BEMS」とは

BEMS(Building Energy Management System)とは、ビル内のエネルギー管理を最適化するためのシステムのことで、スマートビル実現に欠かせないシステムです。

BEMSとビル内の機器をIoT技術で連動させ、ビル内の人流データやエネルギー機器の稼働状況データを収集・分析しながら、空調や換気、電気使用量といった消費エネルギーなどを適切に管理・運用します。

BEMSが普及する以前は、BAS(Building Automation System)というシステムがビル管理に導入されていました。BASは施設内の設備を統合監視・制御できるシステムで、エネルギーの利用状況の監視とエネルギー機器の統合制御が主な機能です。それがBEMSとなり、エネルギー利用状況の可視化・分析によって、設備利用を最適化することが可能となりました。

また、BEMSはBASに比べて導入コストを抑えられるというメリットがあります。

2.スマートビルの市場規模

スマートビルの市場規模は、年々拡大を続けています。

株式会社グローバルインフォメーションの調査によると、世界でのスマートビル市場規模は、2021年の726億米ドルから年平均成長率10.9%の割合で成長しています。2026年には1,216億米ドルと、2倍近くまで成長するとの予想も。

※出典:PR TIMES|スマートビルディングの市場規模、2026年に1,216億米ドル到達予測

さらに、2022年から2030年にかけて年平均成長率25.3%の割合で成長し、2030年には約5,700億米ドルにまで成長すると予測されています。
また、最も成長の早い地域としてアジア太平洋地域の市場が挙げられており、2030年までに約1,664億米ドルにもなるといわれています。

※出典:株式会社グローバルインフォメーション|スマートビルディングの市場規模、シェア、動向分析レポート

3.スマートビルが注目される背景

スマートビルが注目される背景として、セキュリティ強化やCO2排出量の削減による環境保全、ソーシャルディスタンスの確保といったニーズが高まっていることが挙げられます。これらの背景について、1つずつ解説します。

セキュリティの強化

スマートビルが注目される理由の1つとして、安全性向上・情報漏洩防止を目的としたビルのセキュリティ強化のニーズが高まっていることが挙げられます。

富士経済の2021年の調査によると、セキュリティ分野の国内市場は2021年時点で9,811億円であるのに対して、2024年には1兆236億円へと拡大する予測となっています。また、監視カメラシステムやアクセスコントロールなど、ビルやオフィスのセキュリティに関係する分野も拡大が見込まれています。

※出典:株式会社富士経済|セキュリティ関連の国内市場を調査

オフィスやビルのセキュリティを高めるためには、監視カメラや警備員の配置、社内ネットワークのセキュリティ強化といった対策が必要です。スマートビルでは、そうしたセキュリティ強化の取り組みがIoTやAIで最適化されており、施設利用者や入居者の安全を守ったり、情報漏洩を防いだりすることができます。

CO2排出量の削減

環境保全のため、CO2の排出量を削減する取り組みが世界中で急がれています。2015年に採択されたパリ協定では、日本のCO2排出量を、2030年までに2013年と比較して26%削減することを目標としています。

※出典:経済産業省|今さら聞けない「パリ協定」 ~何が決まったのか?私たちは何をすべきか?~

日本ではオフィスビルや商業施設などの分野で、2030年にはCO2排出量を1億6,800万トン(2013年比40%減)に抑える目標が設定されています。

こうした背景から、施設内のエネルギー消費を最適化して無駄を減らすことで、CO2削減効果が期待できるスマートビルへの注目が高まっているのです。

ソーシャルディスタンスの確保

新型コロナウイルス感染症対策として、密を回避し、ソーシャルディスタンスを確保するニーズが高まっていることも、スマートビルに注目が集まる理由の1つです。

ビル管理においてソーシャルディスタンスを確保するためには、カメラやセンサーで人流や密度を検知する必要があります。

スマートビルでは、エレベーター乗車率の検知による密の防止や、AIロボットによる非対面での施設案内が可能です。また、顔認証などにより、非接触でビルの入退館を可能にするシステムを用いることで人の流れをスムーズにすることができます。

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興味のある方は、ぜひ以下のページをご覧ください。

4.スマートビルでできること

スマートビルでできることは、主に以下の2つに分類されます。

  • データの収集・可視化・分析
  • 遠隔操作

スマートビルの持つ機能と、それによって実現できることについて解説します。

データの収集・可視化・分析

スマートビルでは、センサーやカメラで検知した人流データや、エネルギーの使用量に関するデータを可視化・分析することが可能です。

オフィス内の各部屋や商業施設内のテナント、トイレなどにおける人の動きをセンサーで感知し、IoT技術で利用状況をシステムに集約します。集約したデータをシステムで分析すれば、不審者や不正アクセスへの対策といったセキュリティの強化や、空調・照明利用の最適化に役立てることができます。

遠隔操作

スマートビルでは、可視化・分析したデータをもとに、機器を遠隔操作できるという特徴があります。

スマートビルのエネルギー管理システムであるBEMSでは、建物外からの遠隔操作が可能です。BEMSの前身であるBASでは、ビル内の管理室において人の手で管理、操作することが前提でした。

スマートビルでは、センサーで感知した人流データの分析結果を、電気や空調などの機器と連動させ、利便性向上やエネルギー最適化のための調整を自動で行うことが可能です。これにより、より精度の高いビル管理を行うだけでなく、作業の効率化や管理コストの削減を目指すことが可能になります。

5.スマートビルのメリット

スマートビルは、データ分析とIoT機器との連動によって、エネルギー消費の最適化や、施設内の利便性・快適性の向上が可能というメリットがあります。

スマートビルがもたらすメリットについて、以下の3つを解説します。

  • エネルギーの最適化
  • 快適な環境づくり
  • ビルの安全性向上

エネルギー消費の最適化

スマートビルの1つ目のメリットは、データ分析の結果とエネルギー機器の稼働を連動させることで、効率的にビル内のエネルギー消費を最適化できることです。

たとえば、人がいないエリアでは照明を自動で消したり、空調を弱めたりすることでエネルギーの無駄な消費を抑えられます。これにより、エネルギー機器にかかるコストや、CO2排出量の削減効果も期待できます。

快適な環境づくり

スマートビルには、建物内の快適な環境づくりが実現できるというメリットもあります。

スマートビルでは、快適性の向上のため、以下のことが実現可能です。

  • 温度や湿度、酸素濃度の管理
  • 混雑緩和
  • 入退室管理の手間を軽減
  • スペース利用の効率化

データの可視化や分析により、空調管理や換気が最適に行われることで、施設利用者や入居者の快適性の向上が期待できます。

ビルの安全性向上

スマートビルの3つ目のメリットは、不審者対応や情報漏洩防止などのセキュリティ対策を強化し、ビルの安全性を高められることです。たとえば、以下のような機能があります。

  • 人の動きや入退室の状況を監視
  • オフィス内のデスク利用状況を監視

IoT機器によって上記のデータをシステムに集約することで、不審な動きがあれば迅速に対応することが可能です。ビルやオフィスだけでなく、宿泊施設でも宿泊客の出迎えなどに、この技術が活用されています。

6.スマートビルのデメリット

スマートビルは施設内の快適性や利便性を向上させるというメリットがありますが、システムのセキュリティリスクやトラブル発生時の損害など、デメリットも存在します。デメリットを把握した上でリスクに備え、利用者の安全を守ることが重要です。

スマートビルにおけるデメリットについて、以下の2つを解説します。

  • システムのセキュリティリスク
  • トラブル発生時の損害

システムのセキュリティリスク

スマートビルの1つ目のデメリットは、システムそのものにビル全体のセキュリティリスクが依存する点です。スマートビル化によってセキュリティ面は強化されるものの、同時にシステム側のセキュリティも強化しなければなりません。

ウイルスや不正アクセスによる、データの流出やシステム破壊といった事態が起きた場合、施設利用者や入居者に多大な損害が発生することが考えられます。問題が起きた際に対応できるよう、システムの管理者もセキュリティの知識を身につける必要があります。また、あらゆるリスクを想定し、備えることが大切です。

トラブル発生時の損害

スマートビルのIoT機器や管理システムにトラブルが生じた場合、損害が甚大になる可能性があります。システムそのものに問題が起きた場合、連動している空調や電気といったIoT機器も作動しなくなり、ビル全体に影響を及ぼすことが考えられます。

トラブル対応のオペレーションや緊急時のマニュアル、予備電源の導入など、損害を最低限に抑えつつ、直ちにリカバリーできる環境を整えることが必要です。また、システムやIoT機器の定期的なメンテナンスも欠かせません。

7.スマートビルの事例

スマートビルの事例として、以下の2つを紹介します。

  • 東京ポートシティ竹芝(ソフトバンク)
  • 鹿島建設オフィスビル(鹿島建設・OKI)

東京ポートシティ竹芝(ソフトバンク・東急不動産)

ソフトバンク株式会社は、2021年に本社を東京ポートシティ竹芝に移転しました。東京ポートシティ竹芝は、スマートシティ構想の一環として設計され、ソフトバンクなどの最先端技術が搭載されているスマートビルです。

東京ポートシティ竹芝の中で実装されている機能には、以下のものがあります。

  • トイレの空き状況のスマートフォンでの閲覧
  • AI清掃ロボットやゴミ箱の容量検知による清掃効率化
  • 警備ロボットの配置、要注意人物や侵入者の検知・アラートシステム導入

AIや検知システムなどを駆使して利便性と安全性を向上させたスマートビルとなっています。

※参考:ソフトバンクニュース|世界をリードするスマートシティを目指して。ソフトバンク新本社ビル「東京ポートシティ竹芝」が誕生

鹿島建設オフィスビル(鹿島建設・OKI)

最後に、鹿島建設株式会社と沖電気工業株式会社(OKI)による、実証実験の事例を紹介します。鹿島建設のオフィスビルにおいて、ワーカーの健康促進を目的に行動変容サービスの実証実験を行いました。

この実証実験は、「WELL認証」への取り組みとして、ワーカーの行動履歴に応じて健康行動を促すメッセージを送信するというものです。WELL認証とは、オフィスで働くワーカーの健康維持・促進に配慮した建物を評価するシステムです。

オフィスに取り付けられた位置情報ビーコンで、ワーカーが移動するタイミングで階段を使うようメッセージを送信します。スマートフォンの内蔵センサーでワーカーの歩数を記録しているので、長時間デスクワークをしているワーカーに対して、適切なタイミングでメッセージを送信できます。

また、センサーカメラでエレベーターの利用状況を把握し、エレベーターが混雑している場合には階段を使うよう促すことも可能です。

実証実験では、サービス提供前と比べて階段を利用するワーカーが約40%増加したという結果になりました。

8.スマートビルで社会課題解決を実現しよう

スマートビルは、IoT技術やAI技術を用いて、建物利用者の利便性や安全性を向上させることを目的とした建物です。また、エネルギーの最適化によるコスト削減やCO2削減も期待できます。

スマートビルには、カメラやセンサーなどのエッジデバイスによるデータ収集や、AIなどを用いたリアルタイムでのデータ解析が欠かせません。OKIは以下のような強みでスマートビルの活用推進に貢献します。

  • センシング技術とAIエッジデバイスの連携によるリアルタイム解析
  • OKIが長年培ったインフラ設備管理のノウハウによる高信頼性環境の構築
  • 利用者の行動変容を促すアプリケーションなどの提供

また、OKIは「Yume Pro」と称して、グローバルで規定されるIMSのプロセスに則った全員参加型イノベーションを推進中です。ウェルネスオフィスの推進をはじめとするさまざまな社会課題の解決に向け、共創パートナーを募集しています。

オフィスや施設におけるイノベーション創出にご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

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