EMS(設計・製造受託サービス)

EMSの匠

清水 浩二(しみず こうじ)OKIネクステック 開発本部 技術第1部 放送無線技術課 係長
アナログからデジタルまであらゆる要望に応える 無線技術の匠

いま注目を浴びるIoTやDXを実現するうえで、無線通信技術は不可欠な要素の1つです。
OKIグループのDMS(注1)/EMSにおいて、無線分野の事業を担っているのが、OKIネクステック――2021年4月にOKIコミュニケーションシステムズと長野OKIの統合により誕生した新たなOKIグループの一員です。
同社は、社会インフラ向けの無線装置開発で培ったアナログ・デジタル両方の高度な無線技術を保有。
放送用設備や各種業務用無線、IoT向け端末など幅広いジャンルで多くの製品開発実績をあげています。
今回は、OKIネクステック勤続33年で無線機器設計・開発の豊富な実務経験を誇る清水浩二が、同社の強みと自身の“匠”たるスキル・ノウハウについて語ります。

幅広い周波数帯、多様な用途の無線機器開発でスキルを蓄積

私は1988年4月に入社(当時社名は東邦電子)して以来、無線機器全般のハード設計に携わってきました。最初は放送用無線機や消防・防災無線の開発などを手がけました。
その過程でアナログ無線技術のスキルとノウハウを蓄え、さらにデジタル無線機の開発案件を通じて新しい技術に関する知識も増やしてきました。
2010年頃からはデジタル・アナログを問わず、幅広い周波数帯域、さまざまな用途の業務用無線を開発。
近年は主に特定小電力無線の設備更新・新規開発案件への対応やアナログ無線機器開発のプロジェクトリーダーなどの業務をこなしています。

依頼先が極めて少ない「アナログのまま設備更新」の要望に応える

無線の世界は昨今、電波=周波数帯域を効率的に使用できるデジタル方式が主流となり、技術の進化と製品の充実に伴って活用領域も大きく広がっています。
ただ一方で、安価、低消費電力、カバーエリアの広さなどのメリットがあるアナログ方式へのニーズ、特に業務用無線では「扱い慣れた機器をアナログのまま使いたい」という要望も少なくありません。
アナログ無線ユーザーにとって大きな課題となるのが電波法令改正への対応です。
特に、無線設備が発する目的外の不要電波を規制する「スプリアス規格」という国際規格が改正(規制が厳格化)され、日本国内の電波法でも2005年12月から適用されたことで、アナログ・デジタルのどちらでも旧規格の無線機器を利用している場合は、更新のタイミングで新規格に適合することが義務付けられました。
しかし現在、アナログ方式のままでの設備更新をサポートできるメーカー/ベンダーは極めて少なくなっているため、お客様は「どこに頼めばいいのか」という壁に直面します。
そうしたときに、レガシーなアナログ無線技術も保有する当社が、駆け込み寺としてお役に立っています。

最適な部品を選りすぐって作る「ディスクリート回路設計」に強み

当社は、多様な部品(単体素子)を集めてモジュールやユニットを組み上げるディスクリート回路設計技術が強みの1つです。
業務用無線は量産品向けに製造・販売されているモジュールをそのまま使えないことが間々ありますが、当社なら市場にある部品から最適なものを選りすぐって、お客様の要望に叶う無線機器を作り上げることができます。
私は、お客様から相談を受けた際、変調と通信の方式が分かれば「こうやればできそうだ」という形が頭に浮かぶので、それを回路設計に落とし込んでいきます。
よほど特殊あるいは無理のある内容でない限り、かなり広範な要望にお応えできると自負しています。
また、お客様のメリットを考慮し、要望とは異なる仕様を提案することもあります。過去には、市販のデバイスで仕様通りに作ることができた案件で、大幅なコストダウンと消費電力抑制を実現できる手立てを提案し、お客様に仕様変更を承認いただいたことがありました。
仕様の中にノイズ発生や機器の不具合につながる潜在的なリスクを発見し、見直しを提言して納得いただいたこともあります。

「電波が見える」かのようにアンテナ配置を最適化する

もう1つ、私が自信を持って「自分の強み」と言えるスキルがあります。それは基板の設計やケース組込において、アンテナ配置を最適化できることです。
たとえば市販のIoT用モジュールにはセットのアンテナが同梱されていたり、内蔵アンテナが配置されていたりしますが、アンテナは金属や樹脂の成分、人体などで特性が変わるため、端末を組む際の配置や向きによって不具合が生じる場合があります。
そこで私は、基板上の構造物とアンテナの位置、ケース内への取付要件などを確認して、最良と思われる場所にモジュールを配置しています。
「なぜそんなことができるのか?」と質問されることがありますが、長年の実務で培ったものなので明確に答えることもできず、「私は電波が見えるんです」と冗談で返しています(笑)。
とはいえ私の頭の中では、電波の動き、流れがイメージできていて、「こう配置すればスムーズ、こうすると電波が阻害されて不具合が出る、アンテナの向きはこっちがいい」といったことを判断しています。

最新の技術・トレンドも積極的に吸収し、お客様に最適解を提供

当社は現在、ニーズの高いIoT分野で課題の1つとされる端末のバッテリーの問題、「電池交換や充電に手間をかけたくない」というニーズに対応すべく、環境発電を採用した装置の開発にも注力しています。
すでに製品化している光発電でBluetooth Low Energy(BLE)によるビーコン発信が可能なボード製品は、さまざまな引き合いをいただいており、通信規格に関してお客様の要望に応じたカスタマイズにも対応しています。

お客様からの相談事は多種多様です。
「自社で保有するCPUやDSPなどと無線を組み合わせたい」
「ソフトウェアは組めるが無線関連の知識がない」
「自社製品を無線化したいがどの規格が最適なのか分からない」など、

ビジネスに関連するものも多数あります。当社なら無線機器の設計・開発、製造、評価、電波法認証取得までトータルに対応できます。
無線通信は今後も新しい規格が続々登場し、活用領域もどんどん広がっていくでしょう。
そうした最新の技術や市場トレンドなどにもしっかりアンテナを張り、積極的に知識とスキルを吸収して、お客様により柔軟な選択肢を提示できるよう努力していきます。
無線での困り事があったら、ぜひ気軽に相談してほしいと思います。

用語解説

  • 注1: DMS(Design and Manufacturing Service)

    製造のみを受託するEMS(Electronics Manufacturing Service)に加え、設計まで受託する。

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