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コラム2023年06月15日

物流DXとは?業界の課題や施策、国内企業の推進事例を紹介

物流DXとは、デジタル技術を用いて物流業界における従来のビジネスモデルを刷新することです。物流業界の課題解決に役立つとして国がDXを推進し、物流企業だけでなく、多くのプレーヤーから注目されています。

しかしながら、「どうすれば物流DXを実践できるかわからない」「物流DXの定義とは」とお困りの方も多くいらっしゃるでしょう。

そこで本記事では、物流DXの基礎的な知識や物流業界における課題、物流DXの施策、国内の企業事例について解説します。

本記事を読むと物流DXの概要を掴むことができ、課題解決に必要なアクションやデジタル技術がわかるようになります。ぜひ参考にしてください。

目次

1.物流DXとは

物流DXとは、デジタル技術で従来のオペレーションや働き方を改善しながら、物流業界の改革を行うことです。

国土交通省によると、物流DXについて以下のように定義しています。

機械化・デジタル化を通じて物流のこれまでのあり方を変革すること

出典:物流DXについて|国土交通省

たとえば、ドローンや自動配送ロボットによる配送の効率化や、AIによる配送ルート最適化で業務の標準化を図ります。

物流DXの推進施策は、日本の物流政策である「総合物流施策大綱(2021年度?2025年度)」に掲載されています。
総合物流施策大綱では、物流プロセスを標準化しながらDXを推進することが、日本が取り組むべき施策の1つ目として掲げられています。

日本は他の先進国と比較してDXが遅れている現状から、国際的な競争力を高めるためにも物流DXは急務であり、物流業界は対応が求められています。

そもそもDXとは

そもそもDXとは、デジタル技術を活用してビジネスをより良い状態へ変革することを指します。

DXは「Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーション)」の略称で、「Transformation」には「変化」という意味があります。

経済産業省が発表したDXの定義は、次のとおりです。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

出典:「DX推進指標」とそのガイダンス|経済産業省

ここで混同されがちなのが「DX」と「デジタル化」です。DXとデジタル化は似て非なるものであるため、違いを正しく理解する必要があります。

DX デジタル技術を活用し、ビジネスモデルや製品、組織を変革すること。デジタル技術はあくまでも手段となる。
デジタル化 アナログ業務をデジタルに置き換えて、業務効率化を図ること。

デジタル化は、電話やFAXをメールやチャットに置き換えたり、紙の書類をなくして電子処理できるようにツールを導入したりすることです。デジタル化により、業務効率化が実現します。

一方、DXはデジタル技術を用いてビジネスモデルなどを変革することが目的です。企業の競争力を高めるには、単なるデジタル化だけでなくDXが欠かせません。

物流DXが必要とされる背景

物流DXが必要とされる背景として、「2025年の崖」と「2024年問題」があります。

「2025年の崖」とは、DXの推進が遅れることで、1年間で最大12兆円の経済損失が生じるリスクを指し、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」で言及しました。

次に「2024年問題」とは、働き方改革関連法によって2024年以降に発生するとされる問題です。時間外労働の上限に制限がかかることから、ドライバーの賃金低下や運送会社の利益減少など、さまざまな問題が起こると考えられています。

「2025年の崖」や「2024年問題」を解決するには、DXの推進が欠かせません。デジタル技術の活用で業務プロセスや労働環境を刷新し、経済損失を抑えて競争力を高める必要があります。

2024年問題については、こちらの記事で詳しく解説しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。

「物流業界の2024年問題とは?影響と課題をわかりやすく解説」

2.物流DXが国内で遅れている理由

日本は他の先進国と比べて物流DXの推進が遅れているといわれています。ここではその理由を3点解説します。

標準化が難しい

日本の物流現場におけるサービスレベルは高く、標準化が難しいとされています。荷主の要望に応じて臨機応変に対応する、独自の商習慣が存在しているからです。

一方、欧米などでは荷主からの要望に必要以上に応えようとせず、定められた業務にのみ対応するのが一般的です。指示書通りの作業は標準化しやすく、ロボットやシステムに置き換えやすいのが特徴です。

その点、日本は現場スタッフの作業品質が高く、付加価値の提供を通じて荷主が求める水準をクリアしてきました。そのため、デジタル化やDXが他国と比べて進まなかったという背景があります。

複雑なサプライチェーン構造

国内のサプライチェーン構造が複雑である点も、物流DXが遅れる理由の一つです。

製品が目的地に届くまでの「調達」「在庫管理」「配送」「流通」といった一連の流れ(サプライチェーン)は複雑で、多くの会社が関わります。

構造が複雑な物流業界でDXを推進しようとすると、次のような課題が生じる恐れがあります。

  • どの会社がDX推進リーダーになるか決めにくい
  • 複数の取引先から、同じ機能で異なるメーカーのツールを導入するよう要求される

このように、物流業界は複雑なサプライチェーンの影響から、DX推進の方針を統一する難易度が高くなっています。

小規模な事業者が多い

日本の物流業界は小規模な事業者が多い点も、DX推進の課題となっています。

全日本トラック協会の報告(※)によると、従業員数が100人以下の事業者は98.7%、車両台数が100台以下の事業者は98.8%で、トラック運送業界のほとんどが小規模事業者です。

小規模な会社では高齢化が進んでいる傾向にあり、社員全員がドライバーであるケースも少なくありません。デジタル技術の活用やDXを進める専門的な人材や資金を確保できないのが現状です。

小規模な事業者にとってはDX推進の負担は重く、簡単ではないといえます。

※出典:トラック運送業界における認識と課題|公益社団法人全日本トラック協会

OKIとの共創で物流課題の解決に取り組みませんか?

「どうすれば物流DXを実践できるかわからない」
「そもそも物流DXの定義とは...?」
物流の現場では、こういったお困りごとをお持ちではないでしょうか。

OKIは、物流業界のさまざまな社会課題の解決に向け、イノベーションを創出する共創パートナーを募集しています。OKIの技術を活用して、物流業務の効率化を目指しませんか?

たとえば、OKIが提供する「コスト最小型ルート配送最適化AI」を活用すれば、配送ルートを最適化し、配送コストの最小化を実現できます。要件を入力すれば誰でも配送計画が立てられるようになり、業務の標準化や属人化の解消にもつながります。

興味のある方は、ぜひ以下のページをご覧ください。

3.物流業界における課題

物流業界では慢性的な人材不足が続いている一方で、物量は増加傾向にあり、輸配送の効率化が急務となっています。ここでは、物流業界における3つの課題について、詳しく解説します。

EC注文の増加による商品管理の複雑化

インターネットやスマートフォンの発達で、EC注文が増加し商品管理が複雑になった点が課題として挙げられます。コロナ禍での外出自粛や非接触ニーズの増加も、EC市場の拡大を加速させた一因といえるでしょう。

※出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました|経済産業省

経済産業省の報告によると、2021年の消費者向けEC市場規模は約20.7兆円で、前年より7.35%増加しています。特に、配送が必要とされる物販系は2021年で13兆円以上となり、毎年規模が拡大しています。

個人向けの宅配が増加すると、荷物管理が複雑化して現場の負担が増えるだけでなく、倉庫のスペース不足や管理工数の増加にもつながりかねません。

労働力不足

物流業界では、労働力不足も懸念されています。

※出典:物流を取り巻く動向と物流施策の現状について|国土交通省

国土交通省が作成した資料によると、半数近くの運送事業者が人手不足を感じていることがわかりました。さらに、トラックドライバーは高齢化が進んでいるため、労働力不足が加速する恐れがあります。

1-3 物流DXが必要とされる背景」でも解説したように、2024年にはドライバーに対する時間外労働の上限規制が適用されます。何も対策を打たなければ、労働時間の減少により人手不足が深刻化するでしょう。残業時間減少によりドライバーの収入が低下すれば、離職者が増加することも考えられます。

低いトラック積載率

トラック積載率が低いことも物流業界における課題の一つです。トラック積載率とは、トラック1台あたりの最大積載量に対し、実際にどれくらい積載したかを表す数値です。
トラックの輸送効率を示す指標で、重要なKPIとして使われています。

国土交通省の調査によると、積載率は2010年以降、40%以下の低い水準で推移しています。

※出典:我が国の物流を取り巻く現状と取組状況|経済産業省・国土交通省・農林水産省

このデータから、トラックの半分以上のスペースが無駄になっていることがわかります。これは、時間指定配送など物流に求められるサービスレベルが上がり、「多頻度」かつ「少量」の輸送が増えたことが原因と考えられます。

4.物流DXにおける施策

物流業界における課題解決に向けて、DXの推進が必要不可欠です。ここでは、3つの施策について解説します。

倉庫管理の自動化や機械化

倉庫や配送センターなど物流施設における業務自動化や機械化に取り組むことで、物流DXを推進できます。

倉庫業務の自動化や機械化の例として、次のような方法が挙げられます。

  • 自動ピッキングロボットの導入
  • 無人フォークリフトの整備
  • 無人搬送ロボットの活用

ロボットやシステムを導入して倉庫を自動化することで、人手不足の解消や人件費の削減につながります。

しかし、導入費用が高額になる傾向にあるため、リース利用や補助金の活用などを検討すると良いでしょう。

配送の効率化

物流DXを進めるには、配送業務を効率化する技術が必要です。たとえば、次のような技術があります。

AIによる配送ルート最適化

・AIが最適な配送ルートを自動算出する技術

・積載率の増加、配送コストやCO2削減効果が期待できる

ドローン物流

・ドローン利用で道路を使うより迅速に配送できる

・山間部や離島など過疎地域で実験が行われている

自動宅配ロボット

・道路を自動走行して宅配するロボット

・自動運転技術が搭載されている

ドローン物流や自動宅配ロボットは、社会実装に向けた実証実験が重ねられています。

配送の効率化に向けて最新技術を取り入れることで、オペレーションの改善や人手不足の解消につながります。

ペーパーレス化

ペーパーレス化も物流DXの推進に貢献します。

物流業界では、貨物集荷の手続きや配送内容の確認などに紙が多く使われています。件数が多いと伝票の仕訳に時間がかかり、ミスも生じやすい点がデメリットです。

ペーパーレス化を徹底して進めた場合、伝票管理の手間がなくなります。データ化が進めば事務員とドライバーで情報共有がしやすくなり、業務効率化にもつながります。

さらに、データベースを関係企業間で共有できるシステムを導入すれば、連携体制が取りやすくなり生産性の向上に効果的です。物流業界の抜本的な改革につながるとして、汎用化されたシステムの開発が求められています。

5.国内企業における物流DXの事例

国内企業における物流DXの事例を2件紹介します。

OKIの「コスト最小型ルート配送最適化AI」

OKIは、独自のアルゴリズムを用いてルート配送を最適化するAIを開発しました。

配送計画は配送コストや走行距離、積載率を決定する重要な役割を持ち、慎重に策定する必要があります。しかし、効果的な計画を立てるには物流分野における長年の経験が必要で、ノウハウを持つ人材が不足している点が大きな課題です。

OKIのAI技術では、コストを最小化する配送計画を自動で組むことができ、配送ルートを最適化することで配送コストの最小化が実現します。配送要件を入力すれば誰でも計画が立てられるようになり、業務の標準化や属人化の解消にもつながります。

凸版印刷の「倉庫自動管理システム」

凸版印刷株式会社は、倉庫にある資材をリモート管理できるタグとクラウド型プラットフォームを開発しました。

固有のID情報を発信するタグを資材に取り付けると、倉庫における所在を自動管理できる仕組みです。クラウド型プラットフォームでは100万個以上ものタグを管理できます。

運搬物の所在を自動管理し可視化することで、倉庫スタッフの管理業務を軽減し、業務効率化を実現します。

6.まとめ|物流DXで従来のビジネスモデルを刷新しよう

日本の物流業界には労働力不足や非効率な作業など多くの課題がありますが、従来のビジネスモデルを刷新して労働環境や業務効率を改善しようとする動きもでてきています。そして、そこには最新のデジタル技術を用いたDXの推進が必要です。

OKIでは、全員参加型のイノベーション創出に向けた取り組み「Yume Pro」を展開しており、共創パートナーを募集しています。パートナー企業と共創しながら、物流分野に革新を起こし、2030年のサプライチェーン構築の完全自動化を目指します。

物流業界におけるイノベーション創出にご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。

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