OKIグループの商品・サービスにより課題を解決された
お客さまの声や、共創への取り組みをご紹介します。
JAXA様 社屋外観
宇宙科学研究所(ISAS)・航空宇宙技術研究所(NAL)・宇宙開発事業団(NASDA)が1つになり2003年に誕生したJAXA様は、「空へ挑み、宇宙を拓く」というコーポレートメッセージのもと、宇宙航空分野の基礎研究から開発・利用にいたる広範な事業を手がけています。また、日本の宇宙開発を牽引する組織として、この分野に関わる産学官の多くの人と英知を取りまとめていく役目も担っています。
2005年には、宇宙・航空が持つ大きな可能性の追求によって"安全で豊かな社会の実現"を目指すべく、向こう20年を見据えた長期ビジョン「JAXA2025」を発表し、宇宙航空技術の積極利用に向けたさまざまな研究開発に挑戦し続けています。
JAXA様の各種事業は、5年ごとに策定する中期計画に基づいて展開されています。その中で、業務効率化を支援・推進するための情報インフラの整備・活用も進められてきました。
2008年度からの第2次中期計画では、情報インフラ整備のテーマとして「いつでもどこでも業務ができる環境の構築」が掲げられました。そして、その具体策の1つとして、音声通信のIP化による円滑なコミュニケーションの実現に取り組みました。
情報システム部 情報システムグループ
主任開発員 金田 賢伊知 氏
情報システム部情報システムグループ・主任開発員の金田賢伊知氏は、「私どもの事業は、拠点間はもとより外部の方々との密な連携が不可欠です。そのために、時間と場所を選ばずにコミュニケーションがとれる仕組みを整える必要があるのでないかということで、業務現場へのヒアリングや調査を実施し、その結果等から構想を作っていきました」と説明します。
JAXA様では従来、拠点ごとの決裁で電話システムを導入・運営しており、全体では6,000台以上の内線端末と約700台の携帯電話が利用されていましたが、「詳細なヒヤリングを行った結果、『出張や会議が多いため、日頃のコミュニケーションにおいて相手がなかなかつかまらず、携帯電話へのかけ直しや、メールでの伝達など二度手間が多々発生している』、『拠点ごとに電話システムや利用機能が異なるため、人事異動や出張で他事業所へ行くと電話機の操作に戸惑ってしまう』といった業務効率に関する課題が明確になりました」(金田氏)。
加えて、多くの職員が固定電話機と携帯電話を併用していること、一部の拠点間を除いて内線化がなされていなかったことなど、通信コストの面でも改善の余地が多分にありました。
2008年度からの本格的なプロジェクト活動においては、業務現場の実態調査で浮かび上がった諸課題の解決策が検討され、新システムの具体的な要件へと落とし込まれていきました。
そのポイントについて、金田氏は次のように話します。「まず、各拠点の電話機を統一し、センター側で一元的に運用管理できるシステムを求めました。出張時や離席時でもスムーズに連絡が取れるように社内外で使える電話機も必要でした。さらに、事業所内外でも場所に縛られない同一番号の割り当てをすることも絶対に譲れない条件でした」。
こうした要件を盛り込んだ仕様書を開示し、2009年1月に入札を実施。そして、OKIが提案した「SS9100」による企業内IPセントレックスシステムをベースに、NTTコミュニケーションズのIP公衆電話サービス「.Phone Direct」とウィルコムのFMCサービス「W-VPN™」による業務効率化と通信コスト削減を両立する環境の導入を決定しました。
JAXA様に導入された企業内IPセントレックスシステムは、筑波宇宙センターに「SS9100」を設置し、既存のIP専用線(JAXA net)を介して各拠点の端末を制御する形になっています。
現在の計画では、主要7事業所を新システムに接続することとなっており、2009年7月から東京事務所(東京・丸の内)、10月から筑波宇宙センターでの運用がスタート。今後、2010年度末までに内之浦宇宙空間観測所(鹿児島)、相模原キャンパス(神奈川)、本社・調布航空宇宙センター(東京)、種子島宇宙センター(鹿児島)、角田宇宙センター(宮城)と順次展開していく予定です。
電話端末は、出張・外出の多い職員向けとして社内外で兼用できるウィルコムのFMCサービス対応の電話機「WX330J-Z」、拠点内でのモバイル環境を求める職員用にOKIのPHS端末「UM7588」、デスクワーク中心の職員向けには「eおと®」技術により高品質通話を実現するOKIのIP多機能電話機などを採用しました。
筑波宇宙センターには約2,500端末(WX330J-Z、UM7588、一般・多機能電話機、IP多機能電話機を含む)、東京事務所には約200端末を導入。他の5拠点への展開が完了した時点では、総計6,000台(うちWX330J-Zは約2,000台)の規模となります。
各端末からの外線利用は、「SS9100」に接続された「.Phone Direct」に集約しました。これにより、拠点ごとに導入していた一般公衆回線利用料の削減と、通話料の低減が実現されています。
また、個々の端末には「.Phone Direct」の050番号と、この外線番号に紐付けた内線番号を割り当てることで、固定・モバイルを問わず端末を拠点間で移動させても、社外・社内から同じ番号で電話を受けられるようにし、業務の効率化を達成しました。
さらにFMCサービス「W-VPN」を利用している「WX330J-Z」は、外出先でも内線番号での発着信および無料通話(定額料金での通話)が可能になっています。
金田氏は、新システムのポイントの1つに「信頼性の高さ」も掲げています。「何らかのトラブルで通話ができないようになってしまっては、"いつでも使える環境"とはいえません。そこで、ネットワークからシステムまで、あらゆる事態を想定して常に通信を確保できる仕組みを盛り込むことに注力しました」。
具体的には、「S9100」の二重化、IPネットワーク障害に備えた「サバイバルサーバ」の設置および最低限の一般公衆回線の保持などの対策を施しています。
JAXA様が導入した「SS9100」
新システムの導入効果としては、大幅なコスト削減が第一にあげられます。金田氏は、「7事業所への展開が完了した時点で、大幅な通信コスト削減を実現できる見通しです。モバイル端末の数や契約プランの見直し、IP公衆電話サービスとFMCサービスによる通話料の低減などの総合的な効果です」と話します。また、センターシステムや外線の集約、総端末数の削減などによって、運用管理面の負荷軽減も期待できます。
さらに、業務効率化という点では、モバイル端末利用者からは「1台を持ち歩けばどこでも使えるので便利」、「着信履歴によって連絡が取りやすくなった」などの評価が、固定端末の利用者からは「(IP電話でも)通話品質はまったく問題ない」との声が返ってきているそうです。金田氏は、「利用者側の最終的な評価は、対象拠点への導入を滞りなく済ませ、業務現場での利活用を浸透・定着させるまで待つことになるでしょうが、情報インフラ整備を担当する部署としては、当初の目的にかなったコミュニケーション環境実現に向けた設計をし、構築を進められている意義は非常に大きいと思っています」と、新システムに対する満足度を語っています。
「SS9100」による企業内IPセントレックスシステムが、JAXA様の業務効率化・コスト削減に今後も大きく貢献していくことは間違いなさそうです。
音声通信をIPネットワークに統合するとともに、拠点を含む事業所内を一箇所で管理・運営するIPテレフォニーシステムの導入形態。運用管理コストの大幅な削減が可能なばかりでなく、従来のPBX、ビジネスホンが備えている多彩な機能を全ての事業所で使用可能(一般に、通信事業者がIPネットワーク経由でPBX機能を企業に提供するサービス形態を「IPセントレックス」という)。
FMC(Fixed Mobile Convergence)は、固定通信と移動体通信の融合のこと。移動体キャリア各社からモバイル端末(携帯電話/PHS)を企業の内線電話として利用するサービスが提供されている。モバイル端末の通信コスト削減や社内外どこにいても一台のモバイル端末で連絡を取れるなどのメリットがある。
2009年11月17日