OKIはイノベーションによる事業創出を強力に推進し、新たな事業の柱を構築している。物流、ヘルスケア・医療、高度遠隔運用プラットフォームの注力領域において、すべてIMSに準拠した形で新規ソリューションを構築し、現在、事業化の段階に移行している。今後は日本市場に留まらず、海外拠点であるGlobal Innovation Hub(以下、GIH)を通じて現地のシステムインテグレーターや販売パートナーと連携し、グローバルな事業展開を目指す方針である。
OKIは国内製造業として初めて、イノベーション・マネジメントシステム(IMS)の国際規格であるISO56002を2024年度に取得した。これを契機に、イノベーションをグローバルに展開するため、イノベーション基盤の高度化、社員へのIMS教育の強化、プロジェクト運用体制・仕組みの構築・推進を図っている。2031年に500億円以上の新規事業を創出する目標を掲げ、各領域で理想の姿からバックキャストしたビジネスプランを磨き上げている。
OKIは物流、ヘルスケア・医療、高度遠隔運用プラットフォームを注力領域とし、各領域でイノベーションによる事業創出を推進している。
(1)物流領域
物流業界の現場が抱える「2024年問題」を解決するイノベーションとして、中小物流企業向けのデジタル化とコスト削減に注力している。具体的には配車マンの人手不足やスキルを補うための配送最適化ソリューション「LocoMoses® (注1)」や、倉庫内の荷物管理を効率化する新サービス「SHO-XYZ® (注2)」を開発した。グローバルな事業展開のため、多言語にも対応し、海外のお客様へのヒアリング(写真1)も並行して進めている。将来的には荷主、運送業者、倉庫業者をつなぐ共同配送プラットフォームを開発し、サプライチェーン全体の最適化を目指す方針である。

写真1 SHO-XYZ タイでのヒアリング
(2)ヘルスケア・医療領域
本領域では3つのフェーズでイノベーションを創出する。フェーズ1では健康経営支援をテーマとし、行動変容技術を強みとした「Wellbit® (注3)プラットフォーム」を開発した。本プラットフォームにより、睡眠改善をサポートする「Wellbit Sleep」や、ウェルネスオフィスを支援する「Wellbit Office」といったヘルスケアサービスの提供を開始している。
フェーズ2では未病・予防・看護支援をテーマとする。教育分野では体育の授業において、先生や子供たちが心拍数などのバイタル情報を活用する新たな体育ICTソリューションの商用開発を進めている。ここでは、920MHz帯の無線技術を活用したウェアラブル端末(写真2)を共創パートナーとの連携によって超短期間での開発を実現する。医療分野では、看護師など医療現場の業務負荷軽減に着目した尿監視システムの商用化に向け、大学病院や病院と協力しながら実証実験を繰り返している。

写真2 920Mhz帯 ウェアラブル端末イメージ
フェーズ3では、OKIの特長的なエッジ端末も含めてデータの統合活用を通じ、いつでもどこでも受けられる「ヘルスケア・医療支援サービス」により社会のウェルビーイングをグローバルに展開することを目指す。
(3)高度遠隔運用プラットフォーム領域
人口減少と労働力不足という社会課題に対し、エッジプラットフォーム「REMOWAY® (注4)」を核とした遠隔運用ソリューションの社会実装に向けた価値検証をお客様および共創パートナーとともに促進している。鉄道会社とは駅構内の運用管理、道路運用会社とは作業員の安全管理、通信事業者とは製造現場のロボット連携をテーマとした実証実験を繰り返している。人とロボットが協働する上で必要な遠隔統合運用環境を実現するための共通モジュール、API連携、AIエージェント(CAP(注5))を段階的に提供する。REMOWAYは屋内外問わずエッジ端末を接続する通信技術により、各現場を見える化し、データの解析および自動制御を行うプラットフォームの実現を、各領域の共創パートナーと連携して推進している(図1)。また、YumeProチャレンジをトリガーとし、海外拠点におけるREMOWAYを活用したビジネスアイデアのマーケティング活動も開始している。

図1 REMOWAY
本稿では、イノベーション戦略に基づいて推進している注力3領域の取組み例を紹介した。今後はGIHを中心に、共創ファンドや新たなスタートアップ、SIパートナー、販売パートナーと連携しながら、特にグローバルサウスに注力したグローバルマーケティングを優先的に強化していく方針である。OKIはイノベーターや若手社員のIMS教育を強化しつつ、積極的に現地へ赴き、お客様やパートナーの生の声を直接聞き、強い意志を持って活動することを重視し、新規事業の創出に挑戦していく。
(参考文献1)OKIプレスリリース、屋内外問わず保管された製品や設備品などモノの位置情報をスマートフォンで簡単追跡できるロケーション・在庫管理システム「SHO-XYZ」を販売開始、2025年1月20日
(参考文献2)OKIプレスリリース、睡眠習慣を改善する行動変容サービス「Wellbit™ Sleep」を発売、2024年4月16日
(参考文献3)OKIプレスリリース、高度遠隔運用を実現するリモートDXプラットフォーム技術「REMOWAY™」を開発、2022年9月27日
福島浩之:Hiroyuki Fukushima. グローバルマーケティングセンター イノベーションビジネス開発部
吉原和英:Kazuhide Yoshihara. グローバルマーケティングセンター イノベーションビジネス開発部
牛窪裕一:Yuichi Ushikubo. グローバルマーケティングセンター イノベーションビジネス開発部
井上敦夫:Atsuo Inoue. グローバルマーケティングセンター イノベーションビジネス開発部