
取締役常務執行役員
技術責任者
技術本部長
加藤 洋一
2023年度から2025年度にかけて、世界は大きな変革期を迎えています。SDGsへの取組みが一層広がり、カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの流れといった環境意識の高まりが生活・ビジネスのあらゆる領域に浸透しています。また、人口減少や高齢化の影響は日本だけでなく世界規模で顕在化し、生産性向上や地域活性化、医療・福祉の充実が喫緊の課題です。
デジタル社会の加速も著しく、AI・IoT・ロボティクス・5G/6G通信・クラウド技術といった基盤に支えられたスマート社会の実現が、暮らしや産業構造を大きく変えています。地方創生や都市・地域のデジタル化が本格的に推進され、クラウドサービスやデータ利活用による行政・企業間の連携も進展しています。「安全・安心」「つながる社会」「レジリエンス」「包摂性」をキーワードとした新しい社会モデルへの転換が求められています。
こうした社会課題の解決に向けて、企業・自治体・地域住民が一体となって持続可能な成長モデルを構築する機運が高まっています。特に、エネルギーの有効活用や減災・防災、超高齢社会への対応、地域インフラのデジタル化、多様な人々が共生できる社会づくりの重要性が増しています。また、社会的弱者・少子化・孤独対策など新たなテーマも浮上し、幅広い分野での「共創」による課題解決が必要不可欠です。
未来社会を支える技術としては、AIによる業務自動化や予測分析、IoTによるリアルタイムデータ活用、デジタルツインによる現実空間の最適化、ローカル5Gを活用した地域特化型サービス、セキュリティとプライバシー保護の強化など、多様なアプローチが進んでいます。これらは単なる効率化ではなく、「個人も社会も幸せになる」ための技術革新として期待され、生活の質向上と社会的包摂、強靱な社会インフラの実現に貢献しています。
このような複雑化する社会環境の中、次世代を担う人材の育成や多様性の尊重、オープンイノベーションの推進といった要素も非常に重要です。企業や個人の垣根を越えた「共創」が未来社会の基盤となり、新しい価値創造の原動力として機能し始めています。
OKIは「社会の大丈夫をつくっていく。」というコーポレート・キーメッセージを掲げて、社会課題の解決と未来社会の実現に挑戦しています。その中核となるのが「共創」の取組みです。OKIは、単独での技術開発にとどまらず、自治体・企業・研究機関・スタートアップ・地域住民といった多様なパートナーとの連携による“共創型イノベーション”を推進し、社会に新しい価値を提供しています。
実際に近年では、地域社会との共創を強化する取組みが加速しています。たとえば、2024年度に発表されたニュースリリースでは、自治体や通信事業者と連携し、CATV向けIP放送システム(IP Broadcast System for CATV)の共同開発・運用を実証した結果、地域情報伝達や防災・減災サービスなど「地域の安心」を支えるプラットフォームの構築を実現しています。さらに、医療DXや見守り・介護領域でのパートナー協業、企業向けクラウドサービス基盤、スマートビル技術、環境負荷低減ソリューション(脱炭素への対応)なども、ニュースリリースで積極的に外部発信しています。
OKIはこれら外部連携の中で、共創を単なるプロジェクト協業に留めず、「目的・社会課題を共に考え、成果を社会に還元する」ことを重視しています。商品開発やサービス実装、実証実験のプラットフォーム運営などをワンストップで担い、現場・地域の声や社会のニーズを技術革新に反映しています。
こうした取組みの核となるのは、OKIの持つ高度な技術力に加え、オープンイノベーションによる“共創文化”です。各拠点・事業部・プロモーション部門が一体となり、単なる受託開発ではなく「新しい社会モデル創生」「社会的インパクトを持つサービス展開」「利用者目線でのプロダクト開発」を実践しています。2025年度以降は、共創の拠点(OKI Innovation Hubなど)の拡充、地域実証プロジェクトの継続、社会実装フェーズへの本格的な挑戦も視野に入れ、今後はさらなるレベルアップを図っています。
OKIの共創型経営は、外部発信・メディア掲載・受賞事例などを含め、企業価値の向上と社会貢献の両立を目指す礎となっています。今後も、地域・社会とともに「大切なこと」、すなわち社会全体の未来を支える価値創造を加速していきます。
本特集号では、社会課題解決と未来社会創生に向け、OKIが各部門・パートナーと取り組んだ成果を幅広く記載しています。
CATV向けIP放送システム、製造業DX支援や顧客対応ソリューション、車載センサー技術など多岐にわたり、各々の部門が展開する最新技術やサービスを記載しました。また、ロボット遠隔制御技術や、AIを活用したエラー解決、ヘルスケア領域の技術、高度な機能移行サービス、産業分野特化ソリューションなど、時代の要請に応じたアプローチが示されています。全体を通じて、通信・製造・IT・医療・公共インフラなど幅広い領域で、OKIグループの先端技術やサービス事例が体系的に紹介されています。
OKIは、今後も社会的価値の創出と課題解決に向けて、技術・サービス・共創の力を最大限に発揮して社会に貢献します。

図1 共創パートナーとの連携