-
コンピュータ・テレフォニー向けAPIの開発
坪井正志 中野和俊 田子治生
オフィス・コミュニケーションを提供するコンピュータ・テレフォニー統合システムの最新バージョンでは,分散サーバ環境,メッセージ制御やコンテンツ管理等の機能を強化した。さらに本システムではエンドユーザやシステムインテグレータがCTSTAGEの各機能を利用したアプリケーション開発を行えるようにプラットフォームを整備し,そのAPIを「CT-API」として公開した。
-
電子マネー管理サーバ
森健 森正実 宝生真行 山下修
ICカードを用いた電子マネーシステムにおいて,システムの中核となる電子マネー管理サーバについて述べる。本電子マネーシステムは,当社が開発したICカード間価値(電子マネー)移転プロトコルを用い,高い安全性・耐障害性・利便性の実現を目標としている。これらの目標を実現するために,電子マネー管理サーバでは,電子マネー残高管理による電子マネーの偽造監視,取引状況の記録と障害復旧,各店舗の取引情報の管理等の機能を備えている。
-
電子図書館のための全文検索および情報フィルタリング
森田幸伯 和田久美子 池田恵美 羽生田博美
電子図書館システムで必要となる検索技術の開発を行っている。日本語に対する全文検索システムFTSには,字種を用いた疑似語句抽出方式を採用した。本方式は,索引サイズを小さく抑えるとともに検索実行時の処理負荷を軽減することを可能とする。また,個々の利用者の目的/意図を反映した検索(利用者適応)を実現するために,適合性フィードバック機構を持つ情報フィルタリングや,エージェントを利用した情報フィルタリングシステムを開発している。
-
連想辞書を利用した意味検索システム
下畑光夫 杉尾俊之 平塚良治 牧野秀宣
文書検索の質的向上を目的として,意味検索システムを開発した。本システムは,関連する語の集合を記述した連想辞書を用いて検索用キーワードを自動的に調整するので,ユーザが曖昧なキーワードを与えた場合にキーワードを拡張し,より多くの文書を検索することができる。連想辞書は,大規模なテキストデータに出現する各単語の頻度情報を用いて自動的に作成されるので,情報作成の負担が軽減されるとともに,検索対象分野への意味的な整合性を保持することが可能となる。
-
隣接文字のエントロピに基づく定型表現の自動抽出
下畑さより 山本秀樹
テキストから頻繁に出現する語句や言い回し「定型表現」を自動的に抽出する方式について述べている。この方式は,隣接文字のエントロピを基準に専門用語や固有名詞を抽出する。さらに,共起頻度の高い文字列どうしを語順を制約に抽出することにより,イディオムや定型文などの可変部を含む表現も抽出する。この方式は,文字の統計情報だけを用いるので,未知語の有無,言語の別を問わず,「定型表現」の抽出が可能である。コンピュータマニュアルを使った実験においても,分野特有の定型表現が抽出され,本方式の有効性が実証された。
-
C++による遺伝的アルゴリズムライブラリの開発
福島直士 波多野祥二 牧野秀宣 平塚良治
データマイニングに適用可能な遺伝的アルゴリズムのライブラリをC++言語を用いて開発した。遺伝的アルゴリズムは,さまざまな問題に容易に適用できる反面,問題ごとに合わせてプログラミングをする必要がある。本ライブラリはC++言語の標準テンプレートライブラリを用いることにより,柔軟な問題への適用を可能としている。
-
通信エージェント環境とその応用
小山法孝 原田洋子 乙川進一 中沢 修
分散処理システム分野において,メッセージ通信機能,ホスト間移動機能などの高度の情報処理能力を備えた通信エージェント技術が注目されている。通信エージェントを利用することによって,柔軟な分散処理システムを構成することができ,さらにネットワーク通信量の削減や負荷分散機能も実現できる。
本稿では,通信エージェントの基本機能と必要なセキュリティ技術,およびJava言語を使用して開発中の通信エージェント環境について述べ,その応用としてネットワーク管理システム,ワークフロー管理システムを紹介する。
-
リモートアクセスのセキュリティ技術
中川聰 中井敏久
インターネットに接続したリモートユーザが,ファイアウォールを介して安全に組織内ネットワークにアクセスすることができるリモートアクセスシステムを開発した。本システムは,次の特徴を有する。
(1)暗号化処理等の負荷の高い処理を内部ネットワーク内のサーバに分散しているため,ファイアウォールでのスループットが高い。
(2)ネットワーク層のセキュリティプロトコルを用いているため,内部ネットワークに直接接続しているのと等価な環境をリモートユーザに提供できる。
-
次世代移動通信における干渉キャンセラ技術
清水聡 川上英一郎 徳田清仁
次世代移動通信の多元接続方式として,直接拡散型符号分割多元接続(DS-CDMA)が注目されている。DS-CDMAにおいて性能劣化の主要因となる,ユーザ間干渉を抑圧するための干渉キャンセラについて述べる。本稿で提案する干渉キャンセラは,マルチステージ処理に加えて高精度なチャネル推定の機能を持つため,性能の向上が期待できる。シミュレーション評価により,セル容量が増加することを定量的に示している。
-
ウェーブレット変換による画像符号化方式の開発
呉志雄 宮崎朋博 山田陽一
画像符号化技術は近年実用化され,マルチメディア製品に広く使われている。次世代符号化技術として,64kbps以下の超低ビットレートへ圧縮でき,より広いアプリケーションへ適用可能な方式開発への要求が高まっている。筆者らは,ウェーブレット変換による符号化方式を開発し,符号化効率で従来方式を上回り,任意形状画像へも適用可能であることを示した。次世代動画像符号化標準MPEG-4へも提案し,高い評価を得た。
-
誤り耐性動画像符号化方式
福永茂 松村靖子 中井敏久
移動体通信のような誤りの多い伝送路でリアルタイム通信に有効な動画像符号化方式(NEWPRED)を開発した。本方式は受信確認により参照画像を切り替えるため,伝送誤りによる画質劣化の時間的・空間的伝搬を最小限に抑えることが可能である。使用する受信確認信号の種類により2つのモードがあり,伝送路の誤り状態によって使い分けることができる。また,2つのモードを伝送路の状況に応じて適応的に切り替える方式を採用することで,誤り状況が変化する伝送路の状況下でも有効となる。
-
H.263凖拠低ビットレート画像圧縮伸長LSI
引間寿夫
マルチメディア技術の飛躍的な進歩により,圧縮した動画の伝送が普及してきている。このための国際標準として,ITU-Tが1996年に制定したH.263がある。H.263は既存の電話網などの低速度の通信網から,LANなどの高速度の通信網まで適用可能な動画圧縮技術である。
筆者らは,H.263に準拠し,小型化,低価格化,低消費電力化を目指し,主に低ビットレートでの適用を想定した画像圧縮伸張LSI(VCEM)を開発した。VCEMでは,H.263で最も処理が多い動き検出の演算量を従来の50分の1にした手法を採用するなどの改良により,動き検出およびDCT,IDCT処理を1チップで処理することを可能とした。VCEMとマイクロコントローラ1個,16MbitシンクロナスDRAM1個を組み合わせることにより,安価に,かつ小面積で動画像圧縮伸張のシステムを構成することが可能となる。
OCRの適用範囲が拡大する中で,OCRの入力対象外とされていた一般帳票の読み取りに有効な技術を開発した。OCRの制限緩和技術の1つであるこの技術は,帳票の罫線情報から帳票のフォーマットを識別するフォーマット識別技術と,帳票の読み取り領域を特定するフォーマット解析技術からなる。これらの技術をOCRの前処理として使うことにより,一般帳票からの文字の切り出しと認識を可能にした。
-
HMM状態のマルチ共有による音声認識
易傑 伊達正晃 三木敬
音声認識のためのHMMの状態をトップ・ダウンの手法でクラスタリングし,複数のクラスタの線形組み合わせでHMM状態を表現するマルチ共有法を提案する。マルチ共有は従来の単一共有に比べ,状態の表現能力を高め,認識性能の向上に寄与した。さらに,状態をクラスタリングする際に,クラスタとクラスタを構成する状態との距離の和を最小化するという従来の歪みの定義を改めて,隣接クラスタを含む複数のクラスタと該当状態との距離の和を最小化するという新しい歪みを提案する。新歪み定義でクラスタリングして得たマルチ共有HMMは,単一共有に比べ,単語誤認識率を40%以上低減できた。
-
10Gbps双方向波長多重長距離伝送技術
前田英成 山崎浩行 渡辺孝 若林学
近年,インターネット,携帯電話/PHS等の急激な普及に伴い,幹線系通信ネットワークの高速化,広帯域化,大容量化および長距離化が急がれている。ここでは,10Gbps双方向波長多重・長距離光増幅中継伝送において,光信号対雑音比および自己位相変調を考慮した波長分散管理について検討を行った。また,1.3μm零分散ファイバを用いた双方向光増幅器による2chx2ch,10Gbps,93kmx6スパン伝送実験を行い,設計の妥当性と十分なシステムマージンの実現を確認した。
-
通常分散ファイバを用いた光ソリトン伝送
村井仁 四方誠 山田弘美 浅林一誠 尾関幸宏
次世代の大容量・長距離伝送技術として分散補償光ソリトン伝送技術の通常分散ファイバへの適用を検討した。開発したシミュレータにより,各光増幅器間の伝送区間における平均分散を適当な値で交播させる方式で,安定な光ソリトン伝送が可能であることがわかった。また,交播する周回伝送系での実験により,10Gbps分散補償ソリトンで5700km伝送を実現し,長距離の通常分散ファイバ伝送路へのソリトン適用の可能性を確認した。
-
光WDM-LANシステム
鹿嶋正幸 渡辺竜一 中平佳祐 浅林一誠 濱田恒夫 岡山秀彰 加藤幸雄 佐藤秀暁 西垣祐介
このシステムは光の波長多重技術を用い,各ノードに1波長を割り当て光信号を送信し,各ノードをスターカプラで接続することにより各光信号が多重分配され,この多重信号を受信し光フィルタ所望の光信号を選択するといった光波長多重(WDM)ネットワークである。この波長多重技術の核となるのが光フィルタであり,このシステムは,現状では最も切替速度の早いAOTFを用いている。ただし,AOTFは温度変化に依存するため,温度制御が必要であり,このシステムでは安定度を0.32nm以下に抑えている。また,このシステムの1波長当たりの伝送速度は,2.488Gbpsである大容量なシステムを実現している。
-
光ファイバ増幅器用高出力高信頼性0.98µm半導体レーザ
八重樫浩樹 中島徹人 中村幸治 野中敏夫 堀川英明
エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)用励起光源として十分な信頼性を有する0.98μm帯半導体レーザを開発した。従来0.98μm帯半導体レーザは,COD(Catastrophic Optical Damage)と呼ばれる光出射端面の破損が生じやすく,十分な信頼性が得られなかった。今回開発した素子は最大出力390mW以上で,CODは発生せず,連続通電に伴うCODレベルの低下も認められない。出力150mWまで横モードは安定で,この出力レベルまでの使用が可能である。連続通電試験の結果から,出力150mW,温度25℃で,900FIT以下という高い信頼性が推定できる。
-
ギガビットDRAM対応(Ba,Sr)TiO3キャパシタ膜の開発
竹広忍 吉丸正樹
高密度DRAM用として,従来のシリコン窒化膜の数十倍の誘電率を有する(Ba,Sr)TiO3膜を用いたキャパシタの形成技術を開発した。新たに開発した成膜初期基板RF印加スパッタ法により,330℃という低い成膜温度において高い誘電率(膜厚50nmで比誘電率380)を有する良質な(Ba,Sr)TiO3膜を得ることができた。成膜温度の低温化は下部電極Ruの表面モホロジー劣化によるリーク電流の増加を抑制し,(Ba,Sr)TiO3膜を25nmまで薄膜化することを可能にした。これにより,平坦な単純スタック型の構造でギガビット時代のDRAMに十分対応できるキャパシタが実現可能になった。
-
160Gbps大容量ATM-SW構築のためのカスタムメモリ技術
森川剛一 横溝幸一 小田切英昭 高橋徳明 野入晃
大容量共通バス型ATMスイッチ実現に向けたバッファメモリマクロの設計技術について述べた。高速セル処理を実現するために,分散型バッファ方式,ビルトインPLLによるクロック生成手法を提案した。これらの方式を適用したバッファメモリマクロのテストチップを0.5μmCMOSプロセス技術により,試作し,良好な特性を得た。既存のCMOS技術を用いて,総スループット160Gbpsを実現する大容量ATMスイッチが実現可能であることを確認した。
-
強誘電体薄膜材料の開発
小岩一郎 岡田幸久 金原隆雄 加藤博代 海部勝晶
アルコキシドを出発原料とした強誘電体メモリ用SrBi2Ta2O9(SBT)強誘電体薄膜において,その結晶化過程,配向性制御,組成の化学量論値化を検討した。SBT膜の結晶化は650℃以上,強誘電性は700℃以上の熱処理により生じ,800℃で熱処理することによりヒステリシス曲線の角形性が向上する。配向性はSr原料により制御でき,残留分極量はc軸配向性が高い方が低い値を示すことが明らかとなった。通常,Biを化学量論値から過剰に加えるのはBi層状化合物の結晶化を容易にするためであることがわかった。形成溶液の改良により,過剰Biが少ない化学量論に近い膜でも,良好な特性が得られることが明らかとなった。我々が,独自に開発したSBT薄膜は,強誘電体メモリとして有望である。
-
HEMTフリップチップ実装によるミリ波MIC
新井ゆかり 長井清 藤代博記
ミリ波帯回路は,衝突防止レーダや車車間通信等といったIntelligent Transporting System(ITS)関連技術への応用で注目されている。この分野の回路には低コストでかつ作製の容易で安定な形態が要求されるが,能動素子をフリップチップ実装したハイブリッドICは有効なアプローチである。
今回我々は,0.1μmゲート高電子移動度トランジスタチップを誘電体基板上にフリップチップ実装した60GHz帯ハイブリッドICを開発した。アンプ,周波数逓倍器で,従来報告されている最高の周波数において,良好な動作を確認した。
-
光ファイバ加速度センサ
新藤雄吾 佐藤陵沢 新井宏 土田典裕
マイケルソン干渉計を用いた円形振動板方式の光ファイバ加速度センサを開発した。このセンサは高感度で,信頼性および光多重伝送性に優れた特長を有する。これまでに,本センサの設計手法を確立し,従来の高感度地震計とほぼ同程度の性能が得られることを確認した。今後,海底地震観測等のセンサへ応用していく予定である。
-
光定着型2発色感熱記録媒体
小谷野武 海部勝晶 中川二三男 嶋方勝 曽根貞雄 木村晴雄
現在チケット発券システムでは、転写方式あるいは感熱記録方式が広く用いられている。しかし、転写方式ではインクリボンを使用するため、メンテナンス性、エコロジー性が悪く、従来型の感熱記録方式では画像の定着ができないため、改ざんの危険性がある。
我々は、カプラーと反応すると発色するが、反応前であれば光で分解して発色能力を失わせることができるジアゾニウム塩に着目し、定着型感熱記録媒体への応用を試みた。独自に分子設計を行い合成した新規ジフェニルエーテル系ジアゾニウム塩を用いることによって、感熱方式でありながら、定着ができ、赤と黒の2色発色ができる記録媒体を開発することができた。
-
ヴィアポスト型ビルドアップ配線板の開発
板谷哲 中久木穂 高橋良郎
「ヴィアポスト型ビルドアップ配線板」は,高解像度レジストをマスク材に電解めっきで形成した柱状金属体を層間接続に用い,層間接続の微細化,スタック化による配線の高密度化を図った基板である。この基板は,表面平坦性の確保ができフリップチップ実装など,今後期待される新しい実装形態実現が可能である。本稿では,ヴィア径,導体幅をともに75μmまで微細化したヴィアポスト型ビルドアップ配線板の開発について述べる。
-
赤色発光有機EL素子用希土類錯体の材料開発
宮本裕生 上川真弘 池田等
有機エレクトロルミネセンス(EL)素子は低電圧駆動で高輝度な面発光が得られることで注目されているが,赤色発光材料の開発は遅れている。本研究では,色純度の良い赤発光を得るために,希土類(Eu)錯体の材料開発を行い,発光効率に優れ真空蒸着が可能なフルオレン基を有するβ-ジケトン錯体を見いだした。また,正孔輸送層にEu錯体をドープした新しい構造の素子を試作し,エネルギー移動によりEuからの赤発光が得られることを示した。
-
有機金属気相成長YBa2Cu3O7薄膜を用いたバイクリスタル粒界接合素子
山田朋幸 戸田典彦 文忠民
超電導量子干渉計(SQUID)は,超高感度磁気センサとして広く知られている。酸化物高温超電導体を用いてSQUIDを作製する場合には,良好な特性が得られやすいバイクリスタル基板が使用される。今回,MOCVD法により傾角24°のSrTiO3(001)バイクリスタル基板上にYBa2Cu3O7薄膜を成長し,ジョセフソン接合素子を作製・評価した。接合の臨界電流密度は膜厚依存性を示すが,これは薄膜の断面TEM観察から,薄膜表面のドライエッチングダメージと成長時の基板直上層の劣化が原因であることが明らかになった。また,基板貼り合わせ(接合)部の構造をAFM観測により調べ,この接合部のV字形溝が大きい場合,臨界温度以下で接合抵抗が残留しやすいことがわかった。