No.171 交通システム特集

情報化社会の進展に伴い,あらゆる分野で情報通信技術を利用した高度化(インテリジェント化)が進んでいるが,交通システムにおいても同様である。本稿では交通システムに関する高度情報化の基本的な考え方を,道路交通分野のITSを例にとって説明する。当社が考えているITSの概念を示し,利用者の立場に立った機能を整理する。さらにこうした機能を実現するために,交通システムに要求される情報化技術にはどのようなものがあるかを考える。
本年4月よりVICS(Vehicle Information and Communication System)が道路交通情報の提供を開始した。本システムではセンタが各所からの道路交通情報を収集・処理し,道路側に設置されたビーコンや広域のFM多重放送を通して走行車両に情報提供を行う。当社は電波ビーコンを情報提供メディアとするVICSを開発し,各地の道路管理者にシステムを納入してきている。本システムではすべての車両を情報提供対象としているため,統一の提供情報フォーマットや統一の車両への提供形態が決められている。また,情報提供エリアとして全国の道路に展開することが計画されているため,複数のセンタシステムが設置され,各センタシステムはハイアラーキなネットワークによって有機的に接続されている。
道路交通情報の高度化要求に対して,交通管制室として要求に十分応えられる道路交通管制システムの開発を行った。最新のクライアント/サーバシステムを導入したことと,交通管制室の運用ノウハウを取り込んだことで,交通情報の高度化に伴う要求機能を実現するとともに柔軟性・拡張性の拡充を図った。またサーバおよび伝送装置等の二重化により高信頼性,高稼働率を実現し,さらに結合処理装置に処理機能を集約することで,高コストパフォーマンスなシステムとした。
高速道路のSA・PA内に設置された情報ターミナルや一般道路に設置された「道の駅」をベースに道路交通情報の発信と文化交流のための総合的な「マルチメディア地域情報拠点」を構築することにより,高度道路交通システム(ITS)を地域社会に密着したかたちで実現しようとする「情報ステーション」の整備が進んでいる。ここで用いられる地域密着型情報提供システムは,中央局のホストコンピュータと端末装置を専用回線とLANを利用したネットワークで結ぶことにより実現している。
ラジオ再放送システムは,トンネル内等の閉鎖空間における貴重な情報源となる。平常時にはラジオの再放送サービスを行い,非常時には緊急避難情報等を流す重要な役割を担う。当社では主にトンネル内のAMラジオ再放送システムを日本道路公団へ,また地方自治体等を介して全国に納入しており,本稿では,その構成および機能について述べる。
トンネル内の火災,事故等を早期に発見し,消火設備や情報板設備との連携により2次的災害を最小限にとどめることを目的とした,高速道路向けトンネル防災管理システムを開発した。本システムは,当社が長年にわたり培ったノウハウをもとに,トンネル部分の長大化,複合化に対応した機能を強化し,従来システムでの課題を解消したシステムである。
本稿では,トンネル防災システムの主要装置である防災盤,現地盤の機能を中心に述べる。
当社は94年11月,建設省および道路四公団が主体となって公募した「ノンストップ自動料金収受システム」に提案を行い,共同研究者に選定された。提案システムは,路側に設置したビーコンと車内に設置した車載機器との無線通信により,料金所を通過する車両の料金収受処理を自動的に行うものである。共同研究では,60km/hで走行する車両の捕捉,通信エラー率以下の検証,通信結果の車載機器/路側表示器への表示による誘導などを確認した。
ITS(高度道路交通システム)構成要素の1つといわれ,将来自動運転システムに発展するAHS(自動運転道路システム)の実現シナリオ,および,現在の検討状況,課題を解説し,また,その実現に向けて開発,実験中のプロトタイプシステムの1つである「車間側方コントロールシステム」について解説する。このプロトタイプシステムは,AHSを実現するために不可欠な技術である連続路車間通信(車両と道路設備の間でいつでも,どこでも通信が可能)をLCX(漏洩同軸)ケーブルにより実現したシステムである。
電気通信事業者が急速に整備を進めているSDH光伝送システムを,自営通信網を保有するユーザ向けに提供するため,コストパフォーマンスと運用・管理・保守機能が優れた,自営通信網用SDH伝送装置を開発した。本稿では,この自営通信網用SDH伝送装置の適用,特長,構成について述べる。
船舶交通の安全確保や海上治安の維持等の海上通信業務の増大に伴う通信業務の効率化の要求に対応して,対船舶通信システムを開発した。操作端末にビジュアルタッチキーボード(VTK)等を導入することにより操作性の向上を図るとともに,これまでは媒体(FD)を介して行っていた他の陸上データ通信システムとデータのやり取りを媒体レスで行えるようにし,通信業務の効率化を実現した。
ITS(高度道路交通システム)における車載端末は,高度道路交通システムを支える無線技術により路側システムと通信を行い,運転者への情報提供,車両の適切な制御を行う役割を担う。当社では,関係機関と共同でITS対応の車載端末を開発している。本稿では,ITSにおける車載端末に要求される条件,開発中の要素技術について解説し,現在開発中のシステムについて説明する。
日常生活に浸透しつつあるページャを無線通信インフラとした車載情報端末を,ダイハツ工業(株)の委託に基づき共同開発した。これを用いて基地局から車両への情報提供をリアルタイムで行うページャ受信システムのフィールド実験を行い,固定位置,移動体のいずれの状況においても良好な受信結果を得た。
路車間通信・車々間通信は,専用の通信インフラストラクチャを用いて自動車と道路,自動車と自動車との間で通信を行い,交通情報などを提供しようとするものである。当社は早くからこれらの研究プロジェクトに参画し,開発に携わってきた。ビーコンを用いたスポット型の路車間通信はすでに実用化レベルにあるが,連続通信型路車間通信と車々間通信はまだ研究開発段階にあり,国内外で種々の研究・実験が行われている。
将来の,自動車情報システムにおける車載機器のアクティブ制振制御に関する基礎的な検討を行った。運動状態の観測値から遅延時間なしに観測誤差を抑圧し,真値を推定するという信号推定方式を提案し,この方式を車載機器のスカイフックダンパ制御におけるフィードバック制御入力のSN比改善に適用した。提案方式の特性を計算機シミュレーションにより検証した結果,信号推定による雑音抑圧の効果により,雑音がない場合と同程度の制振制御が達成されていることを確認した。さらに,実車走行実験により得られた車体振動データを用いた評価により,提案方式が実データに対しても十分有効であることを明らかにした。
消防隊編成システムのための,計算量が少なく精度の高い車両選択方法を提案している。この選択方法は,対象地域を複数の領域に分割して単純なネットワークを構成し,最短経路探索により火災現場近くから,必要数の車両を選択するものである。本稿では,実際の道路データを用いた評価実験により,本選択方法が,実用的な解を提供するものであることを示している。
次世代の広域物流拠点として,公共的に利用する大容量物流ターミナルでは,無軌道で自律走行が可能な多数の無人搬送車が分担して,荷役搬送作業を行う。この物流ターミナルにおいて多様な変化に柔軟に対応できるシステムを実現するために,無人搬送車のリアルタイムスケジューリングに,マルチエージェントの概念を採り入れ,エージェント間コミュニケーションにおける協調プロトコルとして契約ネットを応用するものとした。各エージェントにおける意思決定時の価値基準の違いがシステムの挙動に与える影響について,シミュレーションを通して考察し,その結果から物流ターミナルにおいて適当な価値基準の指針を与えている。

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