No.167 ソフトウエア生産特集

ソフトウェアを取り巻く環境は近年大きく変化しており,その変化に対応したソフトウェア生産環境の整備が重要な課題となっている。本稿では,沖電気におけるソフトウェア生産環境への取り組みの方針および具体例を紹介する。そのねらいは,オープン化,デファクト化に対応する様々な支援と新技術への取り組みであり,コンサルティングから保守をも含んだシステム,ライフサイクル全般に対する総合的な検討に基づく,重点的かつ効率的な支援を目指している。
当社では,1993年にシステム化方法論「METHOD/ACE」を開発した。このたび,企業情報システムにおけるダウンサイジングの潮流に応えるため,このシステム化方法論「METHOD/ACE」を核としてクライアント/サーバシステムに対応するシステム構築支援体系を用意した。これは,方法論・技法・CASEツールの各々についてクライアント/サーバ機能の強化を行い,この3つを密接に連携させ実効性のあるシステム構築支援体系としたものである。また,産業界の標準化の動きとも整合をとり有効性を高めている。
沖標準分散コンピューティング・アーキテクチャOSDCAは,当社が提供する異機種分散環境の標準システムモデルを規定するものである。OSDCAは,分散コンピューティングを行うためのサービスを規定したベースフレームワーク,情報システムを3つのモデルに分け,各モデルに最適なプラットホームを規定した標準システムアーキテクチャ,および開発環境から構成されており,ユーザが安心して使用できるオープンシステムの提供を目的としている。
クライアント/サーバ(C/S)システム対応のシステム化方法論「METHOD/ACE]を支援する統合CASE環境を構築した。有力な市販ツールを個別ツールとして採用するとともに,それだけでは充足されない機能を実現する個別ツールを開発し,これらの個別ツールの統合および方法論との連携強化を行った。これにより,従来困難であったC/Sシステムの開発を,方法論に則り,確実,容易に行うことができるようになった。
通信用のリアルタイム・フォールトトレラント・コンピュータOKITRONの開発支援システムについて述べている。本システムは実機のUNIXインタフェーサ上に実現したセルフ開発支援環境に加え,実機とワークステーションとの連動によるクロス開発支援環境を実現している。開発支援ツールとしてGNUソフトウェアを利用している。クロス開発支援環境ではアプリケーション開発の各工程に対応した開発支援システムを提供している。
DOL/C++は,マルチプラットフォームにおける分散ソフトウエア構築向け高水準言語の能力を,オブジェクト指向言語C++に付与したものである。DOL/C++の提供する「通信者」クラス,「伝達者」クラス,「データ」クラス,「タプル」クラス等は,分散ソフトウェアの構築におけるプロセス間通信プログラミングを容易化する。また,ウィンドウ環境インタフェースとその視覚的開発環境等も,これらのクラスをもとに実現されている。
 
DOL/C++を使用することにより,分散環境のためのプログラミングが容易になり,ソフトウェアの生産性が大幅に向上することが期待できる。
オブジェクト指向設計手法に構造化設計手法を取り込むことにより,過去の設計資産の流用を可能にした設計支援システムを提案し,その効果について述べる。本支援システムは,オブジェクト指向設計手法に従ったデータ設計支援部と構造化手法に基づいたHCPチャートを使った処理設計部から構成される。本支援システムを実際のプジェクトに適用した例を調査した結果,開発全体で10%,ドキュメント作成時間では70%以上の生産性向上を確認した。特に,流用設計時のソフトウェア開発でその効果が顕著に現れた。
パソコンの,Windowsにおけるマウス操作やキー入力を記録し,自動的に再生するツール「GATW」を開発した。本ツールを使用すると,日常定型業務における繰り返し操作が自動化できる。この他に,自動デモンストレーション,操作方法の教育,アプリケーションの自動テストなどの様々な応用がある。
装置組み込みソフトウェアの開発支援を目的として開発した下流CASEツール“マトリックスエディタ・コンパイラ”について述べている。本ツールは,データ定義やプログラムを,2次元マトリックス等の表によりWS上にビジュアルに記述し,それから自動的にプログラムソースコードを生成するものである。装置組み込みソフトウェアにターゲットを絞り,プログラム設計以降の工程を一貫して支援することを目標としたツールである。
AT互換機BIOSのカスタマイズ時には,BIOSのファンクションコールの動作確認を実施する。この確認作業を省力化・標準化するために,AT互換機BIOSのファンクションコール自動評価システムを開発した。BIOSの評価は,互換仕様部の動作確認と拡張仕様部の動作確認に大別される。本システムの開発・導入により,互換仕様部すなわちファンクションコールの評価品質が安定し,評価期間も大幅に短縮することができた。
「TCP/IP ソケットインタフェース通信テスト支援ツール」は,LANをベースとしたシステム開発におけるテスト環境の構築とテスト効率の向上を目的に開発された。本ツールは模擬サーバマシンや模擬クライアントマシンとして動作する。テスト対象システムの通信手順は状態遷移表で定義される。通信手順と送受信データを指定する状態遷移データ設定,ハードウェア環境を設定するコンフィグレーション設定,状態遷移データに従って送受信を行うシミュレーション実行,シミュレーション結果を検証するトレースデータ検索の各機能からなる。
通信システムのクロステスト環境におけるテスト支援システムV-CDS(Visual-Compact Debugging System)について述べている。V-CDSは,実端末操作感をもつ端末シミュレーション機能と操作履歴を使ったテストの自動実行および検証機能をもつ。V-CDSは,回帰テスト作業の効率化の面で特に効力を発揮する。V-CDSを利用することにより,クロテスト作業の大幅な効率アップが期待できる。
ソフトウェアの部品化を目的としたオブジェクト指向技術と,その技術に基づいて試作したOS・開発支援ツール・交換アプリケーションについて述べる。実用レベルの交換アプリケーションを試作し,それが過負荷試験などにおいても問題なく動作することを確認した。今後さらに,処理能力の向上,使用メモリ量の削減,開発支援ツールの充実を図っていく。
Windows環境で業務システムのクライアントを構築するためのミドルウェアパッケージMUSEを開発した。このパッケージはプロセス間通信サービス群,運用サービス群,入出力サービス群の3つのサービス群からなり,アプリケーション開発の生産性向上,システム構築の容易化,アプリケーション間の相互接続性の確保,システム信頼性の向上を実現している。
OKITAC-2500 金融機関情報システムの金融基幹業務クライアントシステムにおける開発生産性の向上と開発期間の短縮のために,金融機関特有のシステム環境を提供する共通プラットフォーム「JFORCE」を開発し,この上に金融業務アプリケーションを「業務パッケージ」として構築した。開発環境はWindowsベースのセルフ環境であり,市販ツールを有効に活用することができる。この結果,現行システムに比較して大幅な開発期間の短縮を実現した。
オフィスワーカがプログラミングの知識なしに,オフィス業務を支援する情報システムを開発/利用できるオフィス情報システムビルダを開発した。本システムは,仕事のルールを定められた形式の事務用語で定義するのみで,そのルールに従って仕事を実行する業務システムを自動的に生成する。
監視制御システムの大規模化・多様化に伴い,お客様がシステムに要求する機能が高度化・複雑化してきている。この問題に対処するため,構造化分析技法を監視制御システムの開発工程にも導入した。しかし,イベント駆動型の監視制御システムに本技法を適用するためには,様々な工夫が必要であった。本稿では,状態遷移表を中心とした分析技法と,その適用事例を紹介している。
米国においては,チャネル容量の増大やプライベートシステムおよびショートメッセージサービスなどの新サービスの提供,ページングクラスの採用による携帯機の省電力化をねらいとして,昨年TIAにより制御チャネルのディジタル化の規格(IS-136)が制定された。本稿では,通信プロトコルの観点からIS-136の規格の概要およびソフトウェアに要求される機能を示し,これを実現するために開発中のTDMAセルラ携帯機のソフトウェアの構成について述べる。
アウトラインフォントのフォーマット変換や文字編集を行うことができるシステムを開発した。このシステムは,フォーマット変換の際に中間形式のフォーマットを介しているため,内部の処理である編集管理,曲線変換などの共通化がなされ,システム自体も拡張性の高いものとなっている。編集管理においては,文字データの柔軟な検索が,また曲線変換おいては,精度の高い変換が可能である。
 
本システムにより既存のアウトラインフォントを業界標準のフォーマットへ変換した。作成されたフォントは,実用上十分な品質が得られ,またフォントデータサイズの小量化も達成できた。
ラスタライザは,DTP環境で標準装備となっているアウトラインフォントの展開処理系である。そこでは,輪郭線を数値および式で表現したアウトラインフォントをビットマップイメージに展開する処理を行う。著者らは,高速と高品質の相反する関係を両立するラスタライザを開発した。
 
本稿では,ラスタライザの展開処理速度と品質を左右する曲線平滑化処理と塗りつぶし処理について考察し,高速と高品質を達成するために著者らが考察した方法について述べる。

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