平成10年9月22日 沖電気工業株式会社
今期大幅欠損に伴う経営再建計画の実施について
当社はこの度、残念ながら大幅な欠損を出す事態となり、関係各位に多大なご迷惑をおかけすることをお詫び申し上げます。
会社としましては一刻も早くこの事態を乗り切り会社を再建するために、緊急施策および経営再建施策の検討を行って参りました。
今後は、下記緊急施策,経営再建計画(フェニックス21計画)を強力に推進し、体力の強化を図って参りたいと存じます。
当面の収益改善のための緊急施策
本年度の大幅欠損を克服し、99年度黒字化するために98,99の両年度、以下の緊急施策を行う。
- 半導体事業の構造改革およびリストラ策
<SOIに重点投資をシフト>
- 端汎用DRAM新規量産投資をやめ、投資の重点をSOI (Silicon On Insulator) プロセス技術に振り向ける。SOI技術をSPA (Silicon Platform Architecture) に適用し、低電力,高性能,小スペースのロジック・システムLSI一流商品を創出する。
なお、256M以降の汎用DRAM量販事業は行わない。そのための汎用DRAM技術者および営業人員の異動はほぼ完了している。この結果、2000年度に汎用DRAMの比率は15%になる(98年度約30%)。
<一時帰休の実施>
- 低操業生産拠点において98年度上期3日,下期1週間程度の一時帰休を行う。
<人員の削減>
- 低操業対策として臨時社員,パート社員を中心に2000年3月までに最低でも500名(国内グループ総人員の10%相当)の削減を行う。
- 今後の操業状況いかんによっては追加削減対策を行う。
<AT工程の整理>
- グローバルにAT(Assembly & Test) 工程の配置を見直し、米国オレゴン工場の閉鎖とタイ工場へのシフト、八王子工場から宮崎工場へのシフトを行う。
<営業要員の転換,ディーラー強化>
- メモリ営業要員のロジック・システムLSIへの転換,ディーラーへの転出を促進する。
<設備投資の圧縮>
- 先端汎用DRAM事業の縮退にともない、設備投資を今後大幅に圧縮する。
(半導体設備投資実施額)
年度 | 半導体設備 投資総額 | 左を含む 電子デバイス 設備投資額 |
96° 97° 98° 99° 00° | 424億円 334億円 124億円 100億円 予定 200億円 | 437億円 342億円 135億円 |
98、99°の電子デバイス設備投資額は緊急策として最低限の水準にとどめる
<99年度半導体事業損益>
- 上記施策を含め約300億円の総コストの削減を行い、99年度損益をイーブンラインに近づける。
- 固定費の削減
<人員の圧縮>
- 自然退職,関連企業および外部企業への出向・転籍を中心にした人員の圧縮を行う。
- 2001年3月までに沖本体で1,500名(98年期首人員約10,500名対比)、国内関連企業で1,200名(同約13,500名)の人員削減を行う。
- この外に生産構造の見直し,半導体部門のスリム化,海外不採算子会社の整理に伴い、余剰が生じた場合は別途対応する。
<人件費の最適化>
- 上記人員削減に加え、役員報酬追加削減(平均10%, 4月から5%のカットは実施済),従業員賞与抑制,残業0化等により、人件費の最適化を図る。
<間接部門の効率化>
- 管理間接部門人員を10%削減し、直接付加価値創造部門へシフトする。
- 98年度派遣社員を50%削減し、99年度はさらに削減を図る。
<徹底した経費削減>
- 先行投資の抑制および徹底したムダの排除で経費を削減する。人件費,減価償却費を含めた沖本体の総固定費で98,99の各年度200億円(前年度対比)の削減をする。
- 資産の売却
- 内外の撤収工場,施設の土地・建物および有価証券の売却を行う。
- 生産構造の見直し
- 高コスト生産構造を見直し、秩父工場の閉鎖およびその他の生産拠点の整理を行う。
- より低コストを求め、中国,東南アジアへの生産シフトを加速する。
- 海外事業展開の見直し
<不採算子会社の整理>
- 海外において不採算の子会社は撤収する。具体的には以下の子会社につき、ほぼ実施済。
- CDA…米国CAD設計子会社。98年2月会社売却実施済。
- OAP…米国設計開発販売子会社。98年4月会社撤収実施済。
- OSP…シンガポール半導体販売子会社。98年4月余剰人員整理実施済。
- OTI…米国移動通信端末製造販売子会社。98年6月工場部門撤収済,8月販売部門撤収済。
- OSM…米国半導体AT工程製造子会社。98年9月会社撤収。
- 上記子会社の整理により400名強の人員整理が行われる。
<IPネットワーク関連事業の強化>
- 情報通信融合分野として重点的に資源を集中するIP(Internet Protocol) ネットワーク関連事業強化の一環として、北米のマーケティング拠点を強化しグローバルビジネスを展開する。
- 本社および営業機構の見直し
<本社機構の簡素化>
- 2000年度より導入を予定しているカンパニー制・執行役員制に先立ち、本社および事業部門の関係を見直す。そのために本社組織の簡素化を行う。
- 本社戦略機能の強化,サービス機能の事業部門移管・アウトソーシングを実施する。
<営業機構見直し,支社・支店の統廃合>
- 営業機構を見直し全国を本社の主管営業本部が主導し、マーケティング,販売活動を行う。
- 非効率支社・支店は統廃合する。
- (営業機構見直し,支社・支店の統廃合については実施済)
- グループ経営強化
<グループ企業整理・統廃合>
- 内外のグループ企業のミッションを見直し、ビジネスモデル転換に合わせた統廃合を行う。
- キンセキについては沖グループ内でのミッションを見直し、京セラに一部株式を売却、京セラが筆頭株主となった。
<グループ企業への事業移管>
- 沖本体のビジネスモデルでは収益化が困難な一部事業は、スリム化の上グループ企業に事業主体を移管する。
<グループ経営会議の設置>
- グループ内の意思疎通を円滑にし、グループ各社事業のシナジーを高めて総合力を発揮するために99年よりグループ経営会議を設置する。
- 先行投資の抑制
- ビジネスモデルの転換により戦略的重点化を行い、先行投資を抑制する。
| 設備投資 | 研究開発費 |
97° | 540億円 | 395億円 |
98° | 260億円 | 365億円 |
99° | 250億円 | 360億円 |
- アライアンスの推進
- 強味を伸ばし弱みを補完してスピード経営を行うため、積極的にアライアンスを推進する。
以上の施策の実行を通じて、99年度経常損益の黒字化を図る。
経営再建計画(フェニックス21計画)
- 経営再建方針
- 情報通信産業はグローバル化が進展し、ますます競争が激化する環境にあるが、その中で生き抜くために新しいビジネスモデルに転換してスピードある事業運営を行い、『ネットワークソリューションの沖』として、グループをあげてグローバルなネットワーク社会の発展に貢献することを目指す。
そのための施策として「事業構造の転換」と「新しい経営マネジメントの確立」を行って経営を安定させ2000年度で復配する。21世紀最初の年である2001年は沖創業120周年の記念すべき年であり、新しい沖グループの出発の年とする。
- 経営目標
2001年度売上高目標 | (連結)8,500億円 | (単独)6,000億円 |
経常利益目標 | 400億円 | 300億円 |
で再建を果たす。
そのために、99年度は黒字化必達、2000年度で200億円(単独)の経常利益を確保し復配する。高い成長がなくても安定した収益が確保できるよう体力の強化を図る。
- 事業構造の転換
- 通信,情報,半導体の3事業ドメインにおいて競争優位を発揮できる事業セグメントに絞り込む。
(1)重点事業への集中
<通信事業>
- 提案型の情報通信融合事業---ファンダメンタルネットワークソリューション
- 情報通信融合事業領域、特にIP(Internet Protocol)ネットワーク事業に資源をシフトし、グローバルニッチ企業としてのポジションを確立する。
- キャリアネットワーク事業は引き続き安定した基盤事業として重点化する。
<情報事業>
- ネットワーク型の顧客情報デリバリ事業---ネットワークベースシステムソリューション
- カスタマコンタクト事業を当社のシステムソリューションの中核事業と位置付け、既存の金融/官公/旅客市場に展開すると共に、新しい金融サービスや行政サービス,E-コマース市場に拡大する。IPネットワーク・金融システム事業を核として展開する。
- 急拡大する高度交通情報(ITS)市場に対し、先行企業としての強味を生かし積極的な事業展開を行う。
<半導体事業>
- スリムな先端システムLSI事業---SPAソリューション
- SOI技術をベースとするSPA展開でロジック・システムLSI事業に集中し、先端汎用DRAM事業を縮退する。
- 社内システム部門の持つIP(知的資産)に加え、アライアンスにより外部を活用する。
- Cadence社との協業,高速・低消費電力技術で世界一流の商品開発力をつける。
(2)不採算事業の収束
- 上記重点事業へ資源を集中するために、不採算事業から撤退する。
また沖本体が今後目指すビジネスモデルに合致せず、本体での収益化が困難な事業についてはスリム化,効率化を行った上で関連企業への移管を行う。
不採算事業の収束は一部緊急施策で実施済であるが、今後も常に事業を見直し継続する。
<撤退事業>
- 先端汎用DRAM(256M以降),移動通信端末,不採算民需情報システム等
<移管事業>
- 新しい経営マネジメントの確立
- 沖グループとして企業価値(収益,スピード)をベースとしたグローバルスタンダード経営に転換し、業績の回復改善を図り安定的な収益構造を確立する。
(1)経営マネジメントの変革
- 企業価値を実現するための業績評価指標を設定し、さらにMBOを展開強化する事により企業目標を達成する。
- 企業価値を高めることを経営の目標とする。キャッシュフロー、ROI、スピードを重要な企業価値指標とする。
- 測定可能な業績評価指標を用いて戦略を推進する。
- MBO(Management By Objectives) により業務活動を向上させる。
(2)マネジメント体制の変革
<事業体制>
- ビジネスグループ/事業部の再編を行う。
- カンパニー制への転換(2000年度仮想試行,2001年度本格実施)
<経営体制>
- 執行役員制の導入をカンパニー制試行と同時に行う。
- 常務会,経営会議等の意思決定会議を見直す。
- グループ経営会議を設置する。
(3)経営課題とその施策の立案・実行
- 経営マネジメントに関わる種々の経営課題を認識し、解決のための施策を立案,具体化, 実行する。
<経営課題>
- 研究開発のあり方
- 一等商品創出に直結する研究マネジメントの革新
- 商品開発,技術開発,知財権戦略の連携強化
- 設計生産性向上
- 営業体質転換
- 受注型から提案型・新規開発型への営業体質転換
- 営業マン能力の向上
- 集中する事業,市場,顧客,地域へのリソース集中
- 生産構造の革新
- 北関東地区に点在する工場機能の関連企業を含めた統廃合
- 海外生産体制の再編
- 海外事業再構築
- 北米市場を初めとするIP関連事業の早期立ち上げ
- ビジネスモデルに合致しない事業からの撤退
- 戦略的アライアンス,M&Aの促進
- 本社の経営力強化
- 本社の戦略企画機能の強化とサービス機能の見直し
- 本社組織再整理によるスリム化
- 人事政策
- ビジネスモデル転換に適応した人材マネジメント
- 貢献に見合った処遇の実現
- グループ経営力強化
- 各関連企業のミッションの明確化とそれに伴う統廃合,経営マネジメント変革
- 経理制度の刷新
- ABM(Activity Based Management)等の新管理手法の導入
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