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プレスリリース

2006年1月16日

国立大学法人 大阪大学
大阪市立大学
沖電気工業株式会社

大阪大学、大阪市立大学と沖電気、ユビキタスセンサネットワーク用の位置推定新方式を共同開発

ZigBee™等を用いて推定精度を30%向上

大阪大学(総長:宮原秀夫)大学院工学研究科の北山研一教授と、大阪市立大学(学長:金児曉嗣)大学院工学研究科の原晋介教授は、沖電気工業株式会社(社長:篠塚勝正)と共同で、屋内、地下における高精度な位置情報の提供を実現する、ユビキタスセンサネットワーク(注1)用の位置推定方式を開発しました。本方式は、従来の受信信号電力を用いた推定方式をベースに、受信電力の変動を考慮した新しい位置推定方式であり、従来方式と比較して推定精度が約30%向上しました。本方式を用いることで、より高い精度の位置情報を必要とするサービスを提供することが可能となります。

ユビキタスセンサネットワークは、小型で消費電力の小さな無線通信ノードを様々な箇所に多数設置し、搭載したセンサからの情報を収集したり、機器を制御したりすることで、新しい機能やサービスを実現します。例えばビルの照明・空調制御による省電力化、環境情報収集による防災システムなどが期待されています。

これらの新しい機能やサービスを提供するためには、情報を収集したノードの位置情報が必要となる場合が多く考えられます。一方で、ひとつのビルに数百~数万の無線通信ノードを設置することが想定され、すべてのノードでの位置の人的管理は困難です。また今後は人間や荷物といった移動体にノードを取り付けるアプリケーションも期待され、それらを用いたサービス実現のため移動ノードの位置推定が必要となってきます。

位置推定の代表的な方式として、(1)GPS(グローバル・ポジショニング・システム)を用いた方式、(2)送受する無線信号の到達時間から推定する方式、(3)無線信号の受信電力から推定する方式があります。

(1)のGPS方式はノードの消費電力やコストが高く、また衛星からの電波が届かない屋内・地下での推定精度が低いといった問題があり、ユビキタスセンサネットワークに適応することは困難です。そこで、(2)(3)の方式では一部の固定設置した基準ノードの位置を元に、他のノードの位置を推定します。しかし、(2)の無線到達時間による推定方式は、ノードでの時間処理精度を高める必要があります。

そのため、(3)の受信時の電力を用いた方式が注目されていますが、従来の手法は受信電力が距離に反比例して減衰する性質(距離減衰)を利用してノード間の距離を推定していました。しかし実環境においては、受信電力はノード間距離だけではなくマルチパスフェージング(注2)などの影響を受け、同じ距離であっても周辺の環境によって大きく異なります。また、受信電力は常時大きく変動しているので、実用的な推定精度が得られないという問題がありました。

今回開発した技術は、大阪大学、大阪市立大学、沖電気が共同で行った様々な場所での実測結果から、受信電力の変動に関して得られたモデルを用いて、ノードが存在する確率の最も高い点を求める方式です。本方式は距離と受信電力との関係は常時大きく変動していることを前提とした上でノードの位置を推定しており、受信電力を用いた従来手法と比較して位置推定精度を30%以上向上することが可能となっています。本方式は、ZigBeeに依存した方式ではありませんが、基準ノードを多く設置するほど高い推定精度が得られるという特徴がありますので、多くのノードで構成されるZigBeeセンサネットワークに適した方式です。実証実験は、沖電気の「実証実験用ZigBee™無線ノード」(注3)に本方式を実装して行いました。

今回の成果により、基準ノードを設置するだけで、低コストで手軽に移動ノードの位置推定を高い精度で行うことが可能となるシステムが実現できるようになります。また、多くの人が動き回るような場所においても、安定した位置推定精度を提供できるようになります。作業員の移動履歴管理による作業効率向上、位置ごとに異なる情報提供サービス、倉庫での物品管理、災害時の被災者捜索、子供の通学中の安全管理など、位置を必要とする多様なサービスへの適用が期待されます。

なお、本方式を実装した実験システムを、1月20日に東京電機大学で開かれる電子情報通信学会センサネットワーク時限研究会デモセッションに出展します。

図1:開発システムのイメージ図

移動ノードの周辺の基準ノードから受信電力を集計して位置を推定する。基準ノードは3個以上あればよく、数が多い(設置密度が高い)ほど推定精度が高くなる。

図2:実際の位置推定例

開発方式の詳細説明

本方式では、位置が分かっている複数の基準ノードの情報を利用して、移動ノードの位置を推定する。
まず、移動ノードは定期的に信号を送信する(図1-(1))。基準ノードは信号を受信すると、受信電力と移動ノードのIDを位置推定サーバへ送信する(図1-(2))。
位置推定サーバは得られた受信電力値と無線伝搬モデルから、位置推定の対象範囲の各点において、移動ノードが存在する確率(尤度:ゆうど)を求める(図1-(3))。最尤(さいゆう)推定法(注4)を用いることで、尤度の最も高い点を求め、推定位置とする。
基準ノードが3個あれば移動ノードの位置の推定は可能であるが、より多くの基準ノードからの尤度を積算することで、推定精度が向上する。したがって、より高い推定精度が必要な場合は、基準ノード数を増やす(設置密度を高くする)ことで、手軽に高い精度を実現できる(従来手法では、基準ノード数を増やしても、推定精度はほとんど向上しなかった)。
さらに、本方式は受信電力の変動を考慮した推定方式であるため、従来は精度が大きく劣化していた多くの人が動き回るような変動の多い環境においても、精度の高い位置推定が実現できるという特長もある。

用語解説

  • 注1:ユビキタスセンサネットワーク

    ビルや家の中、街中の街灯や橋、山や川などさまざまな場所に、温度、湿度、振動など周囲の環境を検知するセンサに小型の無線機を組み合わせたものを設置してネットワークで接続するもの。これにより「いつでも」「どこでも」知りたい情報を入手できるなど、さまざまなサービスが提供できるようになる。

  • 注2:マルチパスフェージング

    電波は送信アンテナと受信アンテナとの間を伝搬する過程において、障害物などによる反射、回折など様々な原因で多くの異なる経路を通過し、変動を受ける。このような環境をマルチパス環境という。
    マルチパス環境では、送信時には同一であった信号が、経路によって異なる変動を受ける。受信アンテナは異なる変動を受けた多くの信号が合成された信号を受信する。
    この際、経路長の差から各信号の強度や位相は互いに異なっており、信号が強めあう場合と弱めあう場合がある。このような環境では、アンテナの位置関係や障害物のごくわずかな違いによって受信電力は大きく変動する。このような受信電力の変動をフェージングと呼び、マルチパスによる受信電力の変動をマルチパスフェージングと呼ぶ。

  • 注3:ZigBeeと実証実験用ZigBee無線ノード
    1. ZigBee

      短距離無線通信規格のひとつであり、2004年12月に規格が完成した。低速で伝送距離も短いが、省電力で低コストを実現。家庭の場合、照明からホームセキュリティシステムまで、すべてを無線でコントロール可能なネットワークを構築できるようになる。物理層にはIEEE 802.15.4が使われ、無線LAN規格のIEEE 802.11bと同じ2.4GHz帯の周波数帯域を16のチャンネルに分割して利用する。データ転送速度は最大250kbps、伝送距離は屋内で約30m程度であり、ひとつのネットワークに最大64,000個の機器を接続できる。

    2. 実証実験用ZigBee無線ノード

      沖電気で開発した、センサネットワークの評価をするための小型省電力の無線装置のこと。本無線ノードは、無線通信を行う通信部と、ネットワーク経路制御や認証などの処理、および、アプリケーションの処理を行うCPU部、センサやコントローラなどを搭載する入出力部から構成されており、C言語で評価用プログラムを開発するだけで、簡単に実験が可能。また、TELECによる電波の技術適合認証を取得しているため、電波暗室を利用することなく、どこでも無線を利用した実験を行うことが可能。

  • 注4:最尤推定法

    確率モデルに含まれる未知のパラメータを測定データに基づいて推定する方法のひとつで、観測データの尤度が最大になるようにパラメータを決定する方法である。尤度とは、確率モデルでパラメータを仮定した場合に、観測データが得られる確率を表しており、得られた事象のもっともらしさを意味する。
    今回の例では未知パラメータが移動ノードの位置、測定データが受信電力であり、測定データが最も観測される確率が高い位置を推定する。

  • ZigBeeは、Koninklijke Philips Electronics N.Vの商標です。
  • その他、記載されている会社名、製品名は一般に各社の商標または登録商標です。
本件に関する報道機関からのお問合せ先
国立大学法人 大阪大学 総務部評価・広報課 広報係
電話:06-6879-7017
大阪市立大学 事務局 庶務課
電話:06-6605-2011
沖電気工業株式会社 広報部
電話:03-3580-8950
本件に関するお客様からのお問合せ先
沖電気工業株式会社 研究開発本部 ユビキタスシステムラボラトリ
E-mail:rdc-info@oki.com
  • 各リリースの記載内容は発表日現在のものです。その後予告なしに変更される場合がありますので、あらかじめご了承ください。

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