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2005年10月17日

世界最高の増幅特性を持つシリコン基板上のGaN-HEMTを開発

2005年度米電気化学会にて成果を発表し、WiMAXなどへの製品化を計画

沖電気工業株式会社(社長:篠塚勝正、以下沖電気)は、このたび無線通信用パワートランジスタとして世界最高の増幅特性を持つ、大口径シリコン基板上に形成した窒化ガリウム系高電子移動度トランジスタ(GaN-HEMT)の開発に成功しました。今までのSiC(シリコンカーバイト)基板上ではなく、一般のシリコンウェハー上でのGaN-HEMTを作成することにより、特性を落とすことなく約2分の1のコスト低減が見込まれます。これにより無線通信システムの低消費電力・省スペース化・低コスト化を実現し、今後急速な市場拡大が予想される第3世代携帯電話(3G)基地局(注1)や広帯域無線アクセス(WiMAX)(注2)などの普及を促進します。

携帯電話基地局などの無線通信システムは通信容量の増大に対応する多チャネル化のためにチャネルあたりの消費電力の低減化・省スペース化が求められています。このため、システム内で大きなウェートを占める送受信装置の低消費電力化・高密度化が要求されています。送受信装置に用いられるパワートランジスタの増幅特性を改善することにより、送受信装置の増幅回路の段数を減らすことができ、これらの市場ニーズに対応することが可能となります。

これまでGaNを用いたパワートランジスタは、結晶成長を行いやすいSiC基板上に作製していましたが、一般にSiC基板は未だ品質も悪く大口径化も困難で、コストもかなり高いという問題がありました。

このたび開発したデバイスは高コストのSiC基板に比べ1/50〜1/100程度のコストである一般のシリコンウェハーにAlGaN/GaNの構造を成長させ、高電子移動度トランジスタ(GaN-HEMT)を製作することに成功しました。

シリコン基板上への窒化ガリウム系の結晶成長技術の改良により、良質な薄膜を得て高い電子移動度を実現しました。さらにデバイス製作技術としてゲート電極をリセス(凹)構造(注3)に加工した上に形成する技術とゲート長の短縮化(短ゲート化によりゲート幅0.2μm)とオーミック電極(ソース電極およびドレイン電極)にもリセス構造形成技術(リセスオーミック技術)を開発し、さらにデバイス構造の最適化設計を行うことにより、高性能化を実現しました。

得られた特性として増幅特性の指標である相互コンダクタンス(gm)(注4)は、1mmあたり350mSを達成しました。さらに高周波特性として最大発振周波数(fmax)(注5)115GHz、電流利得遮断周波数(ft)(注6)56GHzとSiC上のGaN-HEMTに並ぶ性能を実現しています。これまで発表されているSi基板上GaN-HEMTのfmaxは70〜80GHz程度ですので、大幅に特性が改善されたといえます。

本研究開発は沖電気と名古屋工業大学極微構造デバイス機能システム研究センター(センター長:江川孝志教授)との共同開発であり、一部は文部科学省の科学技術振興調整費の支援を受けて行ったものです。

今後、沖電気では、本技術を基にトランジスタの高出力化に取り組み、第3世代(3G)携帯電話基地局及びWiMAXなどに向けた製品化を進める計画で、2007年には量産出荷を開始する予定です。

なお、本開発成果を2005年10月16日(日)〜10月21日(金)、米国ロサンゼルスにて開催される「米電気化学会 第208回ミーティング」("208th Meeting of The Electrochemical Society")で発表します。詳しくはURLをご覧ください。(http://www.electrochem.org/meetings/future/208/meeting.htm
Symposium Topics:L1 - Nitride and Wide Band gap Semiconductors for Sensors, Photonics and Electronics VI
Title:AlGaN/GaN HEMTs with Recessed Ohmic Electrode on Si Substrates

【デバイス構造と得られた周波数特性】

【今回の開発で得られた高周波数特性】

【用語解説】

(注1)第3世代携帯電話:
3Gとも表現し、ITU(国際電気通信連合)によって定められた世界基準方式である「IMT2000」標準に準拠したデジタル携帯電話のこと。
(注2)WiMAX:
米国電気電子学会で承認された標準規格IEEE802.16に準拠した固定通信。周波数2〜11GHzを使用し、通常半径6〜50kmのエリアをカバーして、最大75Mbpsの通信速度を実現する。
(WiMAXは、Worldwide Interoperability for Microwave Accessの略)
(注3)リセス構造:
リセスはくぼみ(凹)のことで、エッチングによって半導体上に形成したくぼみの上に、ゲート電極を設置するトランジスタ構造。この構造によって、ソース/ゲート間の寄生抵抗を低減するとともに、半導体表面を流れるリーク電流を低減することができる。その結果、トランジスタの高周波特性と耐圧を向上させることが可能。
(注4)相互コンダクタンス:
増幅特性の指標である相互コンダクタンスは、入力電圧振幅に対する出力電流振幅の比(ΔI(出力電流振幅)/ ΔV(入力電圧振幅))で定義され、増幅素子で重要な増幅率(利得、ゲイン)に関係する。単位はS(シーメンス)。
(注5)最大動作周波数(fmax):
トランジスタを電力増幅器としたときの最大動作周波数。遮断周波数に比例するが、さらに、素子の寄生抵抗を低減しないとこの値を改善できない。今回は、ゲート電極の断面をT型にすることなどにより、ゲート電極抵抗を低減。
(注6)電流利得遮断周波数(ft):
全ての増幅素子は高周波で動作させると、電流を増幅する増幅率が低下してくる。この増幅率が1(増幅しない)になる周波数を電流遮断周波数と定義され、素子の高周波性能を示す指標として使用される。


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