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2005年9月15日
ユビキタスセンサネットワークの通信効率と柔軟性の向上を目指す
福井大学(学長:児嶋眞平)工学部知能システム工学科の関山浩介助教授は、沖電気工業株式会社(社長:篠塚勝正)と共同で、このたび、複数の無線通信ノードが自己組織化情報処理原理(注1)を活用した通信タイミングを自律的に制御する方式を、総務省戦略的情報通信研究開発推進制度(SCOPE)の委託研究として開発しました。ユビキタスセンサネットワーク(注2)など、多くの無線通信ノードがマルチホップ通信(注3)するネットワークにおいて、通信効率と柔軟性の向上に効果を発揮します。
ユビキタスセンサネットワークは、小型で消費電力の小さな無線通信ノードを様々な箇所に多数設置し、搭載したセンサからの情報を収集したり、制御用のアクチュエータ(注4)により、機器を制御したりすることで、新しい機能やサービスを実現します。例えばビルの照明・空調制御による省電力化などが期待されています。ひとつのビルには数百〜数万の無線通信ノードを設置することが想定されていますが、同じエリアで同時に無線を送信すると、衝突を起こして通信ができないため、適切に各無線通信ノードの送信タイミングをずらす必要があります。
通信タイミングの代表的な従来方式として、予め割り当てたタイミングで通信を行うTDMA(注5)方式と、同じエリアで他の無線通信が行われていないことを確認してから通信を行うCSMA/CA(注5)方式があります。CSMA/CA方式は柔軟性が高く、上述の問題に適用することは可能ですが、通信前の確認に時間を要するため、通信効率が低くなるという問題があります。また、トラフィックが増加した場合、パケット衝突の発生頻度が高くなり、ノードによってはほとんど発信できなくなるという状態が生じる可能性もあります。
一方で、ユビキタスセンサネットワークは、比較的低い通信レートで実現するため、通信効率を高めることは非常に重要です。その観点では通信効率の高いTDMA方式が注目されますが、新規にノードを追加したり、移動ノードが存在したりするときに柔軟な割当が困難という問題があります。無線の伝播は、建物の形状や壁の材質、人の動きなどにより影響を受けるため、マルチホップ通信の干渉範囲を考慮して、適切なタイムスロット割り当てを事前に設計をすることが困難であるといった問題もあります。
今回開発した技術は、近傍の無線通信ノード間において制御信号(自分の通信タイミングを示す信号)を交換し、相互に通信タイミングを調整しあうことによって、それぞれが自律的に異なるタイムスロットを確保する方式です。各ノードは、電波干渉の影響範囲(タイミングをずらす必要のある範囲)内のノードとだけ制御信号を交換し、ローカルに相互調整を行うことタイムスロット割当(注6)を実現します。各ノードがこうした自律分散的な動作をすることにより、結果としてネットワーク全体の効率的な通信が実現されます。本方式では、通信タイミング調整後はパケット衝突を起こさず、かつ公平な通信が可能となるという特徴があります(開発方式の詳細説明を参照)。
本方式により、多数の無線ノードを設置するビルなどで、特に設定しなくても効率的な通信が可能になるため、設置が容易になるという効果があります。また、災害時などの救助支援などにセンサネットワークを活用するような場合などに、無線環境の変化に応じて適切な通信タイミングの割当ができるので、緊急情報などを効率的に伝送することが可能になります。
実証実験は、沖電気の「実証実験用ZigBee無線ノード」(注7)に本方式を実装して行いました。
今回の成果である自己組織的情報処理原理を活用した通信タイミング制御技術は、今後、標準化活動も視野に入れて方式の成熟化に取り組んでいく予定です。また、沖電気では、ZigBee(TM)を中心としたユビキタスセンサネットワークのシステムへの適用にも取り組んでいきます。
本方式では、各ノードが通信衝突回避のためのタイミング調整を自律分散的に行い、通信衝突の起こらない通信タイミングを基地局の制御に頼らず獲得できる。各ノードは自分の送信するタイミングを通信タイミング情報として定期的に近傍のノードに送信する。各ノードは受けとった近傍ノードの通信タイミング情報に基づき本方式のタイミング調整を行うことにより、初期状態ではバラバラの通信タイミング(図1左)であったものが、図1右のような通信タイミングを形成することができる。(図1では、大きな円が1周期を表し、緑の小さい円が各ノードの通信タイミングを表す。緑の円が円周上で十分離れていれば、通信タイミングが確保できたことになる。)図1左のタイミング形成後において1, 8, 11など送信タイミングが重複しているノードは距離が十分離れており衝突が起こらないノードをあらわす。このように衝突の影響のないノード同士を重なるタイミングに形成することで、全体の通信効率を向上させている。ノードは形成したタイミングで通信を行うことによって、衝突を起こさず通信を行うことが可能となる。わかりやすいように、図1のタイミング形成を、図2, 図3に別の表現で示す。

図1.通信タイミングの調整イメージ。丸はノードの通信タイミングを表し、φcの区間を通過する間に通信を行うとすると、周期的な通信はある速度で矢印方向に回転するものとして表現される。(左は通信タイミング形成前、右は通信タイミング形成後)

図2.通信タイミング形成前(図1の左図の時)の通信の様子。仮に各ノードがバラバラのタイミングで通信を行った場合、縦に重複のある通信は衝突となる。この図では空間的に十分離れているため衝突しないノード同士(ノード1, 8, 11)は同じ列に通信タイミングを書いている。

図3.通信タイミング形成後(図1の右図)の通信の様子。衝突する関係にあるノードとは通信タイミングが重複せず、すべてのノードは衝突を起こさず一定周期にごとに通信が可能となる。また、空間的な配置が十分離れており衝突が起こらないノード(ノード1, 8, ,11など)は同じタイミングで通信を行うことにより、効率よく通信が可能である。
「実証実験用ZigBee無線ノード」を使用して、通信タイミング制御方式を実装した実験システムを構築した。無線通信ノードの信号の送信タイミング、受信状況等の情報を収集、分析することで通信タイミング制御方式の実証評価をすることができる。
手前に置いた16個の無線ノードが通信タイミングを形成している様子を表す。円周上で明るく光っている無線ノード1が(写真を撮影したこの瞬間に)送信している。
写真中の破線は無線ノード1の電波干渉範囲を表し、この範囲内の無線ノードと無線ノード1は制御信号を交換しあっている。無線ノード1は、電波干渉範囲内にある無線ノード2から無線ノード8とは衝突を起こさないように円周上で離れた位置に並ぶように通信タイミングの調整を行うが、他の遠い場所に置いたノードとは、タイミングが重なるように制御を行う。他のノードもそれぞれ自分の場所から通信できる範囲にある他のノードとタイミング制御を調整しあう。(タイミング制御の相互作用を行うノードの組み合わせ(範囲)は、設置場所や周囲の影響を受けるため、各ノードでそれぞれ異なる)
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