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2005年4月19日
世界最高のドレイン効率のパワーGaAs MESFETを開発
無線基地局の小型化、低消費電力化を実現

沖電気工業株式会社(社長:篠塚勝正)は、このたび世界最高のドレイン効率(注1)を実現した10W級無線通信用のパワーGaAs MESFET(注2)の新製品「KGF1934」を開発しました。W-CDMAやCDMA2000といった第3世代携帯電話(注3)を始めとする各種の無線通信基地局の送信用パワーアンプ向けに4月よりサンプル出荷を開始します。量産出荷は6月より開始し月1万個の販売を目指します。
第3世代携帯電話などの無線通信システムでは、地下街、ビル内などへの通信エリアの拡大と、通信速度を維持するため、複数の小エリア基地局で顧客を分散して受け持つマイクロセル化が都市部などで進んでおり、屋内の狭い環境や、マイクロセルに適した小型の基地局の需要が高まっています。このような小型の基地局は、屋内やビルの中等の限られた空間での環境条件から、消費電力の低減と高効率で発熱量の小さいパワー・トランジスタが求められます。
一方、パワーGaAs MESFETでは、一般的に効率を含む高周波特性を向上させるには、電子の移動速度を向上させるため、ゲートの長さを狭めたり、チャネル(注4)の不純物濃度を上げることが効果的です。しかし、これは同時にゲートの破壊に至る電圧(耐圧)を小さくすると言う影響をもたらし、パワーGaAs MESFETが高い電圧で動作することは不可能でした。
弊社では、パワーGaAs MESFETにおいて電源電圧12Vで動作するためのドレイン耐圧を維持し、かつ高効率を得るためにゲートの微細化、リセス構造(注5)の採用、およびチャネル構造の最適化を行いました。この結果、20V以上の高いドレイン耐圧と、1デシベル圧縮点(注6)出力が10Wの高出力で55%以上の高いドレイン効率を両立し、2W出力時でも同25%を達成したパワーGaAs MESFETの開発に成功し、「KGF1934」として商品化しました。「KGF1934」は、これらの特長により、従来比40%の消費電力削減を見込め、送信アンプのドライバ段(注7)で最高の性能を発揮します。
「KGF1934」は、高出力、高効率と、高耐圧を両立すると言う特徴により、第3世代の携帯電話の無線基地局を始めとして、業務用無線などの無線基地局の小型化に寄与します。今後弊社では、KGF1934で得られた技術を発展させ、WiMAX(注8)などの次世代無線通信に対応した6GHz帯までをカバーする高出力、高効率の高周波パワー・トランジスタの開発を進めていく計画です。
【「KGF1934」の内部構造】
【「KGF1934」の販売計画】
- サンプル価格:
- 1,000円
- サンプル出荷開始時期:
- 2005年4月
- 量産出荷開始時期:
- 2005年6月
- 販売目標:
- 月1万個
【「KGF1934」の主な特長】
- 1.動作周波数範囲:
- 0.1GHz〜3GHz
- 2.出力電力:
- 10W
- 3.ドレイン効率:
- 55%以上(@PO1)、21%以上(@PIN=22dBm)
- 4.ケージ:
- 小型フランジ型
【用語解説】
- 注1:ドレイン効率
- 増幅器に供給された電力(電圧×回路電流)が、高周波出力電力に変換されるときの効率。第三世代携帯電話の基地局に使用されるアンプは、規格を満足させる歪特性が要求され、最大出力の1/3〜1/8の出力電力で動作させるため、この出力電力での効率が重要になります。
- 注2:GaAs MESFET
- ガリウムと砒素からなる化合物半導体を用いた金属-半導体電界効果トランジスタ(MESFET:Metal Semiconductor Field Effect Transistor)で、ゲート、ソース、ドレインの3つの電極と、電子の流れるチャネルで構成されます。GaAs(ガリウム砒素)はSi(シリコン)の5倍の電子移動度を持ち、高周波増幅器用のトランジスタとして適しています。
- 注3:第3世代携帯電話
- 3Gとも表現し、ITU(国際電気通信連合)によって定められた世界基準方式である「IMT2000」標準に準拠したデジタル携帯電話のことです。
- 注4:チャネル
- チャネルは、半導体に不純物を注入した層に形成される電子の通り道です。この層の不純物濃度、厚みによって電子の移動する速度が変化するので、最適な濃度、厚みなどの構造を選択することによって、トランジスタの高周波性能を向上させることが可能です。
- 注5:リセス構造
- リセスはくぼみ(凹)のことで、エッチングによって半導体上に形成したくぼみの上に、ゲート電極を設置するトランジスタ構造です。この構造によって、ソース/ゲート間の寄生抵抗を低減するとともに、半導体表面を流れるリーク電流を低減することができます。その結果、トランジスタの高周波特性と耐圧を向上させることが可能です。
- 注6:1デシベル圧縮点
- トランジスタは、入力電力を増加していくと、あるポイントから急激に利得が低下し、入力電力を増加しても出力電力が増加しない飽和状態になります。この飽和状態を示すものとして、小さな入力電力のときの利得が、1dB小さくなった出力電力を指します。
- 注7:ドライバ段
- 最終段の大出力増幅器を駆動するための中出力増幅器。
- 注8:WiMAX
- 米国電気電子学会で承認された標準規格IEEE802.16に準拠した固定通信。周波数2〜11GHzを使用し、通常半径6〜50kmのエリアをカバーして、最大75Mbpsの通信速度を実現します。
(WiMAXは、Worldwide Interoperability for Microwave Accessの略)
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