沖電気工業株式会社(社長:篠塚勝正)は、世界で初めてITS※1で用いられるDSRC※2を利用し、交通状況に関する動画像を車から車へ送信する動画伝送システムを、独立行政法人産業技術総合研究所、名城大学、京都大学と共同で開発しました。実証実験において、携帯電話のテレビ電話より高画質な31万画素(VGAサイズ、640×480ピクセル)の動画を、MPEG-4※3(最大レート2Mbps)に符号化して4Mbpsの伝送速度でスムーズに連続伝送することに成功し、実用化への目処をつけました。今後、システムの小型化やユーザインタフェースの向上を図り、2005年度中の商品化をめざします。
今回、開発した動画伝送システムは、車から撮影した動画像をMPEG-4形式で圧縮し、半径数百メートルのエリアにいる複数の周辺走行車両へ同時送信します。基地局などの通信インフラが不要な車々間通信システムを利用するため、有線ネットワーク上のルータ等で発生する処理遅延がなく、1秒間に最大30枚の画像を送受信できます。
無線通信にはDSRCを採用し、弊社のメディアアクセス制御(以下MAC)技術により走行車両間を車群とするアドホックネットワーク※4において安定した通信品質を保証し、1対1だけでなく複数への送信が可能な1対N通信を実現しました。災害、事故、渋滞等の前方交通状況や車内乗員状態を撮影して周辺の車に伝えるなど安全走行の支援が可能となるだけでなく、仲間同士のドライブでのコミュニケーションツールとしても利用できます。
本システムでは31万画素の動画(640×480ピクセル)を0.3秒以内に伝送することが可能です。送信された動画像は、周辺走行車両の送受信アンテナを経由してカーナビゲーションシステム等に表示できます。現在のカメラ付き携帯電話でサポートするテレビ電話機能が11万画素の動画(352×288ピクセル)をJPEG方式(コマ送り)で伝送するのに比べて、よりスムーズな動画伝送が可能です。
現在、約40%の新車にはカーナビゲーションシステムが搭載され、無線通信を利用して運転者や同乗者のニーズに合わせた情報を提供するテレマティクス※5サービスが始まっています。沖電気では、モバイルユーザの多様なニーズを満たす高度なテレマティクスサービスの実現に向けて既に移動体間の静止画像伝送を目的とした「写々間通信」システムを開発しています。
今後、弊社では新たに実現した車々間での動画像伝送システムの商用化に向けて、システムの小型化や操作性の向上を図る技術を開発していきます。また、現在、国内において民間レベルでの技術標準の策定作業が進められており、標準化を視野にいれて商品化を進めていく予定です。
【アドホックネットワークにおけるMAC技術開発の経緯】
車は、ドライバーの意思で目的地に向かって自律的に走行しており、偶然、目的地までの経路が局所的に同じ走行車両間でアドホックな車群が形成されます。本車群では、走行車両の合流離脱が頻繁に発生するため、車群内の任意車両を基地局と想定して通信品質を集中制御することができません。そのため、基地局の無いアドホックネットワークにおいては、通信品質が保証できる高価なギャランティー型か、通信品質は保証しないが安価なベストエフォート型のどちらかにしなければならず、その選択はメディアのアクセス制御方法に依存します。弊社は、各種の協調走行実験や静止画伝送実験を通して、ベストエフォート型でアプリケーションの実行に必要となる通信品質を保証するメディアアクセス制御技術の開発を行ってきました。弊社のメディアアクセス制御技術を用いることで、安価で動画像を素早く送信する通信システムを実現しました。
【本システムの主な特徴】
- 半径数百メートルのエリアにいる複数の周辺走行車両に対して同時に送信
- 31万画素(VGAサイズ、640×480ピクセル)の動画像(MPEG-4ファイル)を0.3秒以内に伝送
- 1対1だけでなく1対N(複数)での通信が可能
【システム構成】

- 車々間通信装置:無線部では5.8GHz帯無線パケットの送受信や変復調を行い、MACでは送信タイミングの制御や受信パケットの誤り訂正及び検出を行います。
- MPEG-4エンコーダ:CCDカメラの映像をMPEG-4形式に圧縮します。
- HMI部:受信データのデコード、動画の撮影や送信の操作、CCDカメラの映像および受信動画像の表示をします。
- CCDカメラ
- 送受信アンテナ
用語解説:
- ※1:ITS(Intelligent Transport Systems、高度道路交通システム)
- 最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報でネットワークし、交通事故や渋滞などといった道路交通問題の解決を目的に構築する新しい交通システム。
- ※2:DSRC(Dedicated Short Range Communications)
- ETCや商用車管理システム等の路車間通信に用いられる狭い範囲を対象とした通信方式。現在まで光と電波を用いる2つの方式が開発されており、通信可能な範囲は一般に数メートルから数百メートルで、駐車場、物流センタ、ガソリンスタンド、コンビニなどでの活用が考えられている。
- ※3:MPEG-4
- MPEGとはリアルタイムで動画と音声の圧縮・伸長の機能を実現するために策定された規格。MPEG-4は、符号化の向上に加え、高画質ならびに低遅延を実現し、誤り耐性符号化などを大きな特徴としている。
- ※4:アドホックネットワーク
- 無線LANのようなアクセスポイントを必要としない、無線で接続できる端末(パソコン、PDA、携帯電話など)のみで構成されたネットワーク。
- ※5:テレマティクス
- 自動車などの移動体における携帯電話通信、カーナビへの情報提供やインターネット・サービスを提供する技術あるいはマーケットセグメントのこと。ワイヤレス・コミュニケーション技術や車載コンピュータ、GPS(全地球測位システム)などのIT技術を利用して自動車の中で外界の諸サービスを自由に享受する。
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