沖電気工業株式会社(社長:篠塚勝正)は、このたびITS(高度道路交通システム※1)で用いられるDSRC(狭域無線通信方式※2)を利用し、静止画像を車から車へ瞬時に伝送する『写々間通信システム』を開発いたしました。実証実験において、携帯電話で送信できる35万画素と同等の静止画を3秒以内に走行車両間で伝送することに成功し、実用化への目処をつけました。今後、システムの小型化やユーザインタフェースの向上を図り、2004年度中の商品化をめざします。なお、本システムについては、2月4日に札幌市で開催される電子通信情報学会のITS研究会にて発表する予定です。
今回、発表する『写々間通信システム』は、車に設置されているCCDカメラで撮影した静止画像をJPEG形式でファイル化し、無線通信を利用して半径数百メートルのエリアにいる複数の周辺走行車両に対して同時送信します。DSRCシステムを採用し、走行車両間を車群とするアドホックネットワークにおいて通信品質の保障に必要なメディアアクセス制御(以下MAC)技術を開発しました。本技術により、1対1だけでなく、同時に複数の走行車両への送信が可能な1対N通信を実現しました。DSRCを用いることで、ブルートゥース等を利用した場合に数十メートル程度と限られていた通信エリアが数百メートルに広がり、より広い範囲での通信が可能となります。
伝送された画像は、周辺走行車両の送受信アンテナを経由してカーナビゲーションシステム等に表示できます。本システムは、基地局などの通信インフラが不要な車と車との通信(車々間通信)システムを利用するため、有線ネットワーク上のルータ等で発生する処理遅延がなく、即時にデータの送受信が可能です。現在、カメラ付き携帯電話にて送信できる35万画素の静止画(640x480ピクセル)を伝送する場合、本システムでは3秒以内に実現することができ、携帯電話に比べて伝送時間が半分以下になります。また、インフラを利用しないので通信コストが不要となり、安価に静止画を送信できるシステムとなっています。
本システムを利用することにより、災害や事故、渋滞状況等を撮影して周辺の車に伝えるなど、自動車の安全走行を支援することが可能となります。また、仲間同士でドライブする際には、コミュニケーションツールとして利用することで、車内の快適な移動空間が実現できます。
現在、約40%の新車にはカーナビゲーションシステムが搭載され、無線通信を利用して運転者や同乗者のニーズに合わせた情報を提供するテレマティクス(※3)サービスが始まっています。誰もが手軽に、目的地へ迷うことなく辿り着ける便利な車社会の実現に向けて、モバイルユーザの多様なニーズを満たす高度なテレマティクスサービスへの期待が高まり、場所を意識することなくシームレスに情報提供が可能な環境の実現が求められます。
今後、沖電気はテレマティクスサービス市場の拡大を見据え、『写々間通信システム』の商用化に向けて、システムの小型化や操作性の向上を図る技術を開発していきます。また、現在、国内において民間レベルでの技術標準の策定作業が進められており、標準化を視野にいれて商品化を進めていく予定です。
【アドホックネットワークにおけるMAC技術開発の経緯】
車は、ドライバーの意思で目的地に向かって自律的に走行しています。偶然、目的地までの経路が局所的に同じ場合には、走行車両間でアドホックな車群が形成されます。本車群では、走行車両の合流離脱が頻繁に発生するため、車群内の任意車両を基地局と想定して通信品質を集中制御することはできません。そのため、基地局の無いアドホックネットワークにおいては、通信品質が保証できる高価なギャランティー型もしくは通信品質は保証しないが安価なベストエフォート型のどちらかにしなければならず、その選択はメディアアクセス制御方法に依存しています。弊社は、各種の協調走行実験を通して、ベストエフォート型でアプリケーションの実行に必要となる通信品質を保証するメディアアクセス制御技術の開発を行ってきました。弊社のメディアアクセス制御技術を用いることで、安価で静止画像を素早く送信する写々間通信システムを実現しました。
【写々間通信システムの主な特徴】
- 半径数百メートルのエリアにいる複数の周辺走行車両に対して同時に送信
- 640×480ピクセルで35万画素の静止画像(JPEGファイル)を3秒以内に伝送
- 1対1だけでなく1対N(複数)での通信が可能
【DSRCシステム概要】
DSRCシステムは、路側の有線ネットワークに接続した無線基地局と走行車との間で情報を交換しあう路車間通信システムと、走行車両間で情報を交換しあう車々間通信システムに大別されます。路車間通信システムは、既に国内で民間標準(ARIB STD-T75)が定められており、商用化に向けての開発が進められています。一方、車々間通信システムは、現在国内において民間レベルでの研究開発・実験などが行われています。
【システム構成】
- MAC部:送信タイミングの制御や受信パケットの誤り検出を行います。
- RF部:5.8GHz帯無線パケットの送受信や変復調を行います。
- HMI部:静止画の撮影や送信の操作、CCDカメラの映像および受信画像の表示をします。
- CCDカメラ
- 送受信アンテナ
用語解説:
- ※1:ITS(Intelligent Transport Systems)
- 最先端の情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報でネットワークし、交通事故や渋滞などといった道路交通問題の解決を目的に構築する新しい交通システム。
- ※2:DSRC(Dedicated Short Range Communications)
- ETCや商用車管理システム等の路車間通信に用いられる狭い範囲を対象とした通信方式。現在まで光と電波を用いる2つの方式が開発されており、通信可能な範囲は一般に数mから数百mで、駐車場、物流センタ、ガソリンスタンド、コンビニなどでの活用が考えられている。
- ※3:テレマティクス
- 自動車などの移動体における携帯電話通信、カーナビへの情報提供やインターネット・サービスを提供する技術あるいはマーケットセグメントのこと。ワイヤレス・コミュニケーション技術や車載コンピュータ、GPS(全地球測位システム)などのIT技術を利用して自動車の中で外界の諸サービスを自由に享受する。
<ご参考>車両間で静止画を伝送する『写々間通信システム』利用イメージ
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