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2001年10月29日

次世代のモバイル大容量データ通信を実現する
最大動作周波数110GHzで動作する
高増幅超高周波トランジスタの開発に成功

〜ICSCRM2001(シリコンカーバイドと関連材料に関する国際会議)で発表〜


沖電気工業株式会社(社長 篠塚勝正)は、このたびモバイル端末で映像などのマルチメディアサービスを実現する、超高周波特性と高増幅特性を同時に満足するT型リセスゲート構造の超高周波窒化ガリウム系高電子移動度トランジスタ(以下GaN-HEMT)の開発に成功いたしました。今回の成功は、オングストローム(一億分の1cm)レベルの高精度なエッチング精度を持ち、素子特性を劣化させないよう半導体結晶に損傷を与えない、精密な窒化ガリウム(GaN)半導体エッチング技術を含む総合的なGaN-HEMTプロセス技術の開発により実現したものです。なお、本開発は、経済産業省のプロジェクトである超低損失電力素子技術開発研究体の研究として、(財)新機能素子研究開発協会を通じて、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託を受けて実施されたもので、本日より筑波で開催されるICSCRM2001(シリコンカーバイドと関連材料に関する国際会議)にて発表いたします。

次世代のモバイルアクセス系ネットワークでは、モバイル端末で映像などのマルチメディアサービスを実現するために無線アクセスネットワークの大容量化が要請されています。このモバイル大容量データ通信の実現には、高い信号速度の伝送のため超高周波でありながら、大気による吸収などの問題解決のための大出力動作が可能な無線デバイスの実現が求められていました。新しい半導体材料である窒化ガリウム(GaN)を用いると、電子の走行速度が速く、且つ高耐圧なデバイスの実現が可能であるために、高出力・超高周波デバイスとして期待されていました。しかしながら、窒化ガリウムを用いての素子構造、製造技術の開発が困難で、その材料の性能を十分に発揮することができませんでした。

弊社では、最新の電子ビーム露光法を用いて0.21マイクロメートルという微細なゲート長を達成し、上部のT型部分の長さを2マイクロメートル程度にして、電極の低抵抗化を両立させるとともに、精密なGaN半導体エッチング技術を含む総合的なプロセス技術を開発し、超高周波特性と高増幅特性を同時に満足するT型リセスゲート構造のGaN-HEMTの開発に成功いたしました。

今回開発したGaN-HEMTは、高周波特性の指標である電流遮断周波数が60GHzという高い高周波特性と、素子の動作限界としての最大動作周波数119GHzと、増幅特性の指標となる相互コンダクタンス250mS/mm(ミリジーメンス パー ミリメートル)を達成し、超高周波特性と高増幅特性を同時に実現したものです。これにより従来のGaAs系のマルチチップ増幅器モジュールをGaN-HEMT単体デバイスで実現でき、GaN-HEMTによって、小型、低コストの高出力超高周波システムが可能となります。

今後、弊社ではさらにデバイス・プロセスを改善し2年後商品化を行い、2年後に4,000億円になるといわれるマイクロ波・ミリ波領域の高出力・超高周波増幅器市場で、10%のシェアを目指します。


【用語解説】

GaN-HEMTによる高出力化:
現在、携帯電話の増幅器、超高速の光通信用の情報処理集積回路として広く用いられている、GaAs-ICよりも10倍程度の高出力特性が期待されている。

リセス構造:
リセスとはくぼみ(凹)のことで、HEMTのゲートを凹部の中に形成した構造。
トランジスタの寄生抵抗を大きく低減する効果があり、素子の増幅特性、高周波特性を改善できる。しかし、オングストローム(一億分の1cm)レベルの高精度なエッチング精度と、素子特性を劣化させないように、半導体結晶に損傷を与えないことが必要で、その加工技術の困難さにより、GaN-HEMT素子においてほとんど用いられてこなかった。

電流遮断周波数:
全ての増幅素子は高周波で動作させると、電流を増幅する増幅率が低下してくる。この増幅率が1(増幅しない)になる周波数を電流遮断周波数と定義され、素子の高周波性能を示す指標として使用される。今回の60GHzという値は、国内でトップデータ(これまで42GHzが報告されている)であり、開発が先行する米国に迫るものとなる。世界トップデータを持つ米国のヒューズ社は0.05µm(マイクロメートル)という超微細なゲート長で105GHzという遮断周波数を発表したが、沖は0.21µmで60GHzを達成しており、潜在性能では沖のHEMTのほうがはるかに高いといえる。遮断周波数は、ゲート長に反比例するためである。現在の量産技術で可能な0.1µmレベルのゲート長を今後実現することにより、120GHz以上という極めて高い遮断周波数も将来、期待される。

最大動作周波数:
トランジスタを電力増幅器としたときの最大動作周波数。遮断周波数に比例するが、さらに、素子の寄生抵抗を低減しないとこの値を改善できない。今回は、ゲート電極の断面をT型にすることなどにより、ゲート電極抵抗を低減した。これまでの国内トップデータは97GHz、世界トップデータは110GHz(遮断周波数と同様にゲート長が0.05µmという量産不可能な微細ゲートを用いている)である。

相互コンダクタンス:
増幅特性の指標である相互コンダクタンスは、入力電圧振幅に対する出力電流振幅の比(ΔI(出力電流振幅)/ ΔV(入力電圧振幅))で定義され、増幅素子で重要な増幅率(利得、ゲイン)に関係する。国内トップデータは150mS/mm程度であった。沖は、0.5µmのゲート長を持つリセス構造HEMTで327mS/mmで世界トップクラスの特性を発表している。また、ゲートを極微細化すると相互コンダクタンスが低下するという一般的課題が存在するが、今回の0.21µmのゲートで250mS/mmという値は極めて高いといえる。

GaN-HEMTによる小型化:
出力性能の高さだけでなく、同一出力で比較すると従来のGaAs素子モジュールなどを5〜10分の1に小型化でき、システムの小型化に貢献し、低コストの無線システムを実現できる。

ゲート長0.21マイクロメートルのメリット:
すべての電界効果トランジスタ(FET)はゲート長が短くなるほど動作速度が速くなる。今回、最新の電子ビーム露光法を用いて0.21マイクロメートルという微細なゲート長を達成すると共に、上部のT型部分の長さを2マイクロメートル程度にして、電極の低抵抗化を両立させた。

mS/mm:
ミリメートル当たりの相互コンダクタンスを現す単位。ミリジーメンス パー ミリメートルと呼ぶ。

超高周波:
携帯電話などで現在使われている数GHzより高い周波数帯域で、マイクロ波(〜10GHz)、準ミリ波(10〜30GHz)、ミリ波(30GHz〜100GHz)の周波数帯域をいう。
注:GHzは周波数の単位。1GHz = 10の9乗Hz = 1,000,000,000Hz

高増幅特性:
高増幅特性とは、小さな入力信号電力で大出力の信号電力を得ること。

GaAs系のマルチチップ増幅器モジュール:
GaAs系トランジスタでは、1つ1つの出力が小さいため、複数個を並べて接続することにより、大きな出力が得られるようにしたモジュール。

T型ゲート:
通常は断面がI型のゲートが用いられる。しかし、電力トランジスタのように、電力出力を得るため、ゲート巾が広く設計されるとゲート電極の長さが長くなり、ゲート電極の抵抗が高くなって、動作周波数を劣化させる。このため、ゲート電極の断面をT型とし、断面積を増加させることで電極の抵抗を減少する方法が用いられる。

T型ゲート図



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     広報部 電話:03-3580-8950

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